実は誤解していた OODAループとPDCAの使い分け

 


OODAループ(ウーダループ、OODA Loop)とは、あらゆる領域で適用できる「戦略の一般理論です。直観等の人間の潜在能力を活かした瞬時の判断と実行の思考法「OODAループ思考でもあります。

OODAループが日本でも認知されてきましたが、いまだに誤解が多くあります。日本でOODAループを議論すると必ず、PDCAサイクルとどう違うのか、使い分けできるか、組み合わせできるかという質問をされます。

OODAループは、PDCAとは全く異なります。OODAループは一生を通してどんなことにも使える思考法です。PDCAは工業製品の生産技術で使われてきた継続的改善手法です。OODAループとPDCAを全ての要素で同じ次元で比較できません。


結論:OODAループとPDCAの違い

OODAループとPDCAの違いは、OODAループ「OS」に対して、PDCA「アプリ」といった関係になります。

OODAループは、いわば最新OSです。あらゆるヒトやモノゴトがつながる*、ネットを基盤とし学習機能を持つリアルタイム処理最新OSです。インターネット、スマホそしてAI機械学習が登場して主流となっている思考法です。

PDCAは、いわばアプリです。メインフレームが中心の時代から使われてきた大量データのバッチ処理アプリケーションプログラムです。エミュレータを使いOODAループでも使えます。

* IoE : Internet of Everything

OODAループとPDCAの関係


日本は先進国で生産性と賃金が最下位です。
私達は日本再興のためOODAループを提唱しています。
既に先進企業はOODAループを取り入れ劇的な成果を出しています。


強いてOODAループとPDCAを比較すると

そこで、ここでは、PDCAサイクルを行なっている人のために、PDCAサイクルが使われている次元と範囲に限って、OODAループとPDCAの比較をします。

最近、PDCAは古く、AIの時代はOODAループだといった表面的な議論が氾濫しています。PDCA信奉者からの感情的な反発もあります。

このページでは、日本で広まっている工場ではなく経営管理の領域で使われる「PDCAサイクル」と「OODAループ」との違いをみていきます。

OODAループについての誤解があります。多くの誤解は、PDCAの考え方を踏まえてOODAループを理解しようとしていることから生じていると思われます。

企業で、特にマーケティングや商品企画開発、人事、経営管理などで、PDCAサイクルとOODAループを適用する場合に、どのように異なっているかを見てみましょう。

以下に違いをわかりやすく解説します。


要約:OODAループとPDCAの違い

上司が部下にかけるコトバで、OODAループとPDCAの違いが如実に出ます。

PDCAサイクルでは、「それで大丈夫か?」といいます。
OODAループでは、「スゴイ!」といいます。

適用領域の違い

OODAループ:汎用の思考法
OODAループはどんな所でも使える思考法です。

PDCA:継続改善手法
PDCAサイクル
とは、工場で生産などの業務と製品を継続的に改善するための統計的品質統制*の方法です。

* Statistical Quality Control, SQC

手順の違い

PDCA:手順を重視する
PDCAは工業製品の品質管理などで有効な継続改善の手法です。手順が重要です。計画が起点となり、計画に従う行動と計画との乖離の確認に集中することになります。

OODAループ:人間的要素を重視する
OODAループは、夢・ビジョン実現に向け確実に成果が出ることに集中して行動するための理論です。手順は固定ではなくショートカットもあります。

また、OODAループは単なる手順ではありません。願望、直観、感情など人間的な要素も扱う思考法です。

前提とする状況の違い

PDCA:想定内の安定状況を前提とする
PDCAは、暗黙の了解としてこれまでの状況が変わらないことを想定しています。工業製品の生産のように、状況が変わらないことを前提に計画を立てるのがPDCAです。現状を打破するイノベーションは想定していません。どのようになるか正確に予測できない状況では機能しません。

OODAループ:想定外のVUCAの状況を前提とする
想定外のことが起こる現実のVUCAの世界では、問題を未然に発見して対処する必要があります。思っていなかったことが起きても、瞬時に軌道修正して対処する必要があります。このためには、その場での俊敏な判断と行動が必要です。これがOODAループです。


詳細:OODAループとPDCAサイクルの違い

PDCAサイクルとOODAループは本来は対比できる概念ではありません。強いてPDCAサイクルとOODAループの違いをわかりやすく示すと下図のようになります。

PDCAサイクルとOODAループは、分野ごとに比較することで各々の特徴と分野ごとの有用性が明らかになります。


「PDCAサイクル」と「OODAループ」の想定している適用領域

本来のPDCAサイクルとOODAループは適用すべき領域や世界が異なります。前提とする状況と目的が違い、直接に対比できるものではありません。

PDCAサイクル

PDCAサイクルは、統計的品質統制 SQC, Statistical Quality Controlにおいて歴史的に大きな成果を出してきており、ここで改めて議論する必要はありません。PDCAは全てのモノゴトが想定できる世界で機能します。「PDCAはもう古い」という方もいますが、安定した環境で、かつ心理や感情など人間的要素を無視できる世界では有効です。

しかし、近年はPDCAが、工場の品質統制ではなく、経営企画、プロダクト開発、マーケティング、販売、生産、サプライチェーン、人事、経営管理などの領域で適用されることがあります。

これらの領域は、展開する外部環境との相互作用が多く、想定外の事態が起きます。本来のPDCAが想定していたものではありません。

OODAループ

一方のOODAループは想定外のことが起きる状況で有効です。また、メンタルや感情など人間的側面を重視しています。


高速PDCAと光速OODAループ

OODAループでは、現場の即断即行のために直観が使われます。瞬時の判断が重要なのです。

直観は、並列分散処理をこなす大脳皮質と脳幹をつなぐ大脳基底核の「尾状核」Caudate Nucleusで司られることが明らかになっています。脳がニューラルネットの光速で発想し、約500ミリ秒後に行動します。直観による処理速度の反射力を生かしたのがOODAループです。

PDCAが行動の判断までに、計画を立てているのと異なります。計画作成を高速化してもそれは時間単位あるいは日単位、週、月単位になります。

光速OODAループによって、ここ一番のプレゼンテーションやディベート、ディスカッション、意見交換、説得といった場面で成功します。ジョンボイド自身、直観による反射力を活かしたOODAループがあまりにも凄まじい成果を出すので、一時期公表するのをためらっていたというほどです。


想定している環境

PDCAサイクル

PDCAは環境の変化がないという前提が成り立てば有効です。これは人間的な側面を排除した安定した環境が前提になります。

私たちがいる世界は人間的側面が大きく、人間的事象に計画制御のPDCAを当てはめることに無理があります。環境は変化し人間的な心理や行動が不明確な中、想定外のことが起きない環境という前提が成り立たなくなっています。

OODAループ

OODAループは、想定外のことが起こるVUCAの世界を前提にしています。VUCAとは、不安定で Volatile、不確実で Uncertain、複雑で Complex、曖昧な Ambiguous 世界です。

私たちが接している日常がどのような状況かによって行動が異なってきます。状況と行動の関係を体型立てて定義し、OODAループの世界観:VSAと対応づけたのがVUCAフレームワークです。


想定している組織文化

組織や文化、業務、経営制度などの側面も、PDCAとOODAループで異なってきます。

PDCAサイクル

PDCAは、命令統制 Command & Control の中央集権組織を暗黙のうちに前提としています。マネジメント側により計画 Plan と評価 Check が行われ、現場が実行(Do)と改善(Act)をする階層組織で適用されていることがあります。

ここで興味深いのは、中央集権組織と思われてきた代表格の軍隊組織が、OODAループを全面採用していることです。

OODAループ

OODAループは、自律分散組織を実現させることが前提となっています。個々人がモチベーションをあげて取り組む組織文化を作って行きます。

世界の主要国の軍隊組織は自律分散組織に転換しています。

権限委譲された現場の個々人が主体となりOODAループを実行する次世代 自律分散組織は「ワクワクする組織といわれています。


計画とビジョン

PDCAサイクル

PDCAの「計画(Plan)」は、計画策定を決めた後は実行して改善するまで変更しません。

OODAループ

OODAループではそのような固定した計画はありません。「わかる(Orient)」というOODAループの過程で、世界観:VSAを随時見直し更新して適用をしていきます。


目標管理

経営制度、目標管理などの側面も、PDCAとOODAループで異なってきます。

PDCAサイクル

PDCAの「実行(Do)」は、「評価(Check)」で、数値目標の達成状況を評価されます。

OODAループ

OODAループではそのような固定した数値目標はありません。自律自己統制です。主体的に目標を管理する方法が目標管理:VSAです。一部の企業ではOKRと言われています。


戦略

PDCAサイクル

PDCAの想定している戦略は第1世代から1970年代までの第3世代の戦略です。

軍事の世界で説明しますと、PDCAは大量破壊の「消耗戦」の戦闘を想定しています。

OODAループ

OODAループは、第4世代から6世代経営戦略を想定しています。

スピードの「機動戦」の戦闘を対象としています。OODAループは環境と行動との間の乖離にまで適用していることから対象領域が広範です。このため、PDCAと比較対象とするものではありません。


PDCAは日本だけ、世界はOODAループ

PDCAサイクル

経営の領域でPDCAが使われているのは日本だけです(米国でトヨタ生産方式をネタにしたリーンコンサルタントが日本企業の工場で適用しているのが唯一の例外です)。

PDCAを提唱していたとされるデミング。しかし、実はデミングはPDCAを推奨していませんでした。誤りを指摘していました。詳細は拙著「すぐ決まる組織-OODAマネジメント」で紹介しています。

OODAループ

世界の先進企業はOODAループを使っています。日本企業がPDCAを何度も回しているうちに、例えば、シリコンバレーのIT企業はOODAループを実行してマーケットを寡占してしまっています。

例えば、リーンスタートアップはOODAループの適用例です。また、特許権ですが、特許の手続きをして時間を浪費しないでマーケットに投入して市場創造、市場寡占をしてしまいます。デザイン思考もOODAループの戦略理論に基づいています。

ビジネスでOODAループを知らずにPDCAにこだわっていては、もはや生き残れません。

OODAループを使っていくには、OODAループの問題点と欠点をわかっている必要があります。


適用事例:受験、石橋、軍事、トヨタ開発方式

OODAループは、世界の軍事で適用され、ビジネスなどで使われ始めています。OODAループ導入の前後で、その成果が全く異なっています。

PDCAとOODAの違いを「石橋の渡り方」「受験勉強の仕方」「軍事の事例」をとおして、OODAループの具体例を「営業」や「教育現場」「日常の仕事」をとおして説明します。

アメリカ軍ジョンボイド大佐が評価した日本でのOODAループは、トヨタ開発方式:TDSでした。

OODAループの概要説明は、こちらです。


PDCAの欠点

PDCAは日本企業を停滞させた元凶だ

詳細は、こちらをご覧ください。

PDCAの問題点と致命的欠点

詳細は、こちらをご覧ください。


PDCAの欠点を補完し、結局、置換するOODAループ

品質統制などPDCAが有効な分野ではPDCAの強みを生かして、PDCAの欠点の領域をOODAループで補完させて併用するのが合理的です。

特に変化する環境に適応するためビジョンから戦略の柔軟な策定と実行の領域でOODAループが有効です。

ただし、OODAループが機能しだすと、結果的にPDCAは不要になります。実際には、結局、PDCAを廃止している企業が多く出てきています。


OODAループを組織に適用するための入門書

OODAループの組織への適用法を解説した書籍が「「すぐ決まる組織」のつくり方 OODAマネジメント」です。OODAループの適用実績にもとづく世界初のOODAマネジメント入門書になります。OODAマネジメントの概要紹介については、こちらをご覧ください。


OODAループ思考 [入門]

日本人のために書かれたOODAループそのものの使い方マニュアルが「OODAループ思考」です。OODAループ思考の概要紹介については、こちらをご覧ください。


関連ページ:
OODAループの紹介は、「OODAループとは?:1分でわかる解説」をご覧ください。
OODAループの解説は、「OODAループ:戦略一般理論」をご覧ください。
OODAループの誤解は、「OODAループ:よくある誤解」をご覧ください。
PDCAサイクルの紹介は、「PDCAサイクルとは?:1分でわかる解説」をご覧ください。
PDCAサイクルの限界の解説は、「PDCAで生き残れる?:問題点と致命的欠点」をご覧ください。

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著者:アイ&カンパニー 入江仁之
参考:OODAループについてのこの他の小論文リストはこちらです。
出典:本論文は2005年以来のOODAループ実装実績に基づく提言です。参考文献はこちらです。
脚注:本論文はビジネスにおけるPDCAとOODAループの適用について議論しています。
   PDCAの品質統制への適用について議論するものではございません。
   本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
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