OODAループの具体例:石橋の渡り方

OODAループの使い方を、石橋の渡り方を具体例に、わかりやすくまとめてみます。

以下は私たちが現場で体験してきた日本企業の日本人と欧米企業での欧米人(アメリカ、ドイツ、フランス、オランダ等)や中国人そしてインド人の行動や考え方です。


石橋をたたいて渡る日本人:PDCA

石橋を渡るときにも、PDCAを使うのは日本人です。

日本人は学校教育をとおして解答が正しいかチェックされることが体に染み付いています。会社に入っても活発にPDCAの研修がされています。計画どおりに行っているか評価されることが当たり前になっています。

計画する:Plan

日本人は、川を渡る目的を決めどの石橋をどのようにいつ渡るか時間をかけて根回しをして関係者の合意をえます。

行う:Do

決めた計画に従いみんなで一斉に石橋を渡りはじめます。

食い止める:Check

渡りだして実際に計画で想定したとおりに石橋が頑丈か石橋をたたきます。

石橋をたたいて、たたき壊す

石橋をたたいて、たたいて、たたき壊してしまいます。

理由を分析しながら引き返します。

戻ったら情況を報告書に書いて上司に説明します。上司から報告書が不十分だと突き返されます。

石橋をたたいて渡らない

多くの人は、上司からの追求が厳しいので、石橋をたたいても渡らない理由を探すことに専念しています。石橋を渡らない方がいい理由を洗い出し、完璧な報告書を作成します。

動く:Act

危ない橋を渡る

メンバーの間に危ない橋を渡るのかという意見が出て、結論が出ません、

時間が経つと上司がPDCAを早く回せといいだします。

石橋をたたいて渡る

もし上司から渡るようにと指示が出れば部下は責任を取らなくて済むので、みんなが石をたたいて渡ることに合意します。

石橋をたたいて渡りきります。


目的は?

これでやっと川を渡るという計画は達成できました。

しかし、みんなで石橋を渡る計画について振り返り、どこが悪かったかの議論をしています。

目的地がどこかは誰も気にしていません。

これまでの日本人の思考と合っているPDCA

このようなことが日本企業の現場で起きています。

まさに、PDCAの進め方と同じです。日本人の一般的な考え方(世界観)からPDCAができ、あるべきと考えている行動パターンにしっくりくるのでPDCAがもてはやされ、喧伝されています。

「PDCA:問題点と致命的欠点」については、こちらを参照してください。


CIAスパイ:組織の殺し屋

計画を立てて、計画に従って行動する。このような事象が皆さんの周りで起きていませんか?

このようなことが起きている組織には、自らリスクをとって行動をする人はバカを見ることになります。言われたとおりに行動していれば、楽です。

その結果、優秀な人でも指示に従っていたほうがいいと考え、指示待ち族になって行きます。

指示待ち族は、組織を潰すスパイ「組織の殺し屋」です。第二次世界大戦時に、CIAがこのような事態を引き起こすための活動をしていました。CIAの実践マニュアルが公開されました。

詳細は拙著「すぐ決まる組織-OODAマネジメント」で紹介しています。


石橋をさっさと渡る欧米人:OODAループ

欧米人

一方、シリコンバレーのエリートなどの欧米人はOODAループを使って橋を渡ります。

自分で考えて判断する訓練を大学までの教育を通して行われています。小中高でも少人数のケーススタディによるアクティブラーニンングで訓練され、判断力が身についています。

みる:Observe

まわりを見渡して、状況を把握します。

目的地に行くために川にかかっている石橋を洗い出します。

渡れそうな橋かどうかをみます。崩れそうな橋だったら、さっさと別の橋を探します。

わかる:Orient

目的は何か、まわりで何が起きているかに関心をよせます。

自分たちの目的から、行くべき所、渡る橋を見極めます。

きめる:Decide

目的地に行くために一番いい橋を決めます。

躊躇なく渡るときめます。

うごく:Act

川を渡り目的地に到達します。

PDCAとOODAループの違い、OODAループの使い方

石橋の渡り方で、PDCAとOODAループの本質的な違いがお分りいただけたでしょうか。この例の他に、受験勉強、そして軍事の例などあらゆる場面で違いをみることできます。

「PDCAとOODAループの違い」については、こちらを参照してください。


欧米人の考え方と合致しているOODAループ

まわりを見ると、中国人やインド人も近くに来ています。日本人は見かけません。

欧米人と中国人、インド人が合流して盛り上がっています。

そこに日本人ジャーナリストが来て、どうして欧米人はスピードが速いのか取材しています。欧米人たちがインタビューに答えます。

「日本人は橋の渡り方はすごく精緻で正確ですね」

日本人ジャーナリストが去ると、欧米人たちの本音が出ます。

「あの日本人たち、大丈夫か?」

欧米人の行動の仕方は、OODAループに従っています。

OODAループの概要説明(OODAループ:PDCAでは生き残れない)はこちらです。

日本人と欧米人の思考の違い

日本人の一般的な思考を、欧米人と比較するとその特徴が如実に明らかになります。

日本人の世界観

日本人の慎重な仕事の姿勢や行動の仕方が、PDCAの考え方と一致しています。このためPDCAの普及により、日本人の特性が強調され、ますますスピードを遅くさせています。

日本人は、事前に十二分に分析して、根回しをし関係者の合意を得て、再三検討してからモノゴトを進めようとします。

これは過剰な品質、過剰な完成度、過剰な部門間調整を求めます。このため動きが遅くなり動きだした時にはすでに状況が変わってしまっています。

欧米人の世界観

欧米人は、理想とする姿と目標を決め、不完全なものでもすぐにいろいろな活動を始めます。途中で問題が発生すれば軌道修正し方向転換しながら目標に向かって作業を進め目標を達成してしまいます。

中国人やインド人も似ています。彼らはさっさと活動を始め、試行錯誤しながら結果を出してしまいます。




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著者:アイ&カンパニー 入江仁之
出典:本論文は2005年以来のOODAループ実装結果に拠る提言です。
脚注:本論文はビジネスにおけるPDCAとOODAループの適用について議論しています。
   私たちは、OODAループを広義のOODAループ理論つまりジョンボイド理論として定義しています。PDCAの品質統制への適用について議論するものではございません。
   本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
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