トヨタの強みの一つがトヨタ開発方式:TDS, Toyota Product Development System です。トヨタ製品開発方式ともいわれています。
トヨタ開発方式は、特に、アメリカにおいて高い評価を得ています。例えば、ジョンボイドは、トヨタの優れた事例としてトヨタ開発方式をあげて議論をしています。
トヨタ開発方式の海外での評価
トヨタは、トヨタ生産方式:TPS, Toyota Production Systemが日本では有名です。
一方、海外では、トヨタ開発方式:TDSも、注目され研究されて各社が真似しようとしています。トヨタの強みの一つとして、既に、欧米企業で研究がなされ世界的に有名となっています。
一方の日本の製造業では、欧米企業と比べて必ずしも有名ではなく、TDSを適用することにより、なお大きな改革機会があります。
チーフエンジニア制度
トヨタ開発方式TDSは、一商品に一チーフエンジニアを置くチーフエンジニア制度が取られています。チーフエンジニアを中心に、市場/顧客の視点に基づいて商品企画、開発、生産技術、調達、原価管理、品質管理等をフロントローディングで決めていく製品開発プロセスです。
チーフエンジニアは、主査とも言われ、アメリカでは、チーフエンジニアよりも主査 Shusa の方が使われています。
商品開発の全責任を負うチーフエンジニア
チーフエンジニアは、マーケティングから、商品の価値提案、商品の利益、利益の実現、販売まで一貫して責任を持ちます。組織運営の仕組みとして、製品開発の司令塔としてチーフエンジニアをおいています。マトリクス組織やプロジェクト組織のような側面を擁しています。製品軸と機能軸を合理的に機能させています。
加えて、チーフエンジニアはその責任を、権威によって全うしています。
チーフエンジニアの育成も、権威の象徴として位置づけることにより実現しています。チーフエンジニアはエリートコースで、経営幹部にはチーフエンジニア出身者がいます。
海外の競合他社では長年、トヨタ本社へ訪問し主査制度を研究し勉強しています。真似しようとしています。
しかし、簡単に真似できていないのがこの権威に関わるところです。
顧客視点
トヨタ開発方式 TDSの起点は顧客です。必要なものを必要な時に必要なだけ作る考え方が顧客視点です。
商品の市場をみつけ、商品の価値を定め、売れる価格を決め、利益を差し引いて必要なコストを決めます。顧客起点です。お客様が求めるモノと価格を所与として製品開発、原価企画などを行っていきます。
商品企画:事業創成
商品企画のためには、商品製品企画・調査研究開発の再定義が必要であり、市場展開のロードマップによる推進管理を実行します。事業創成の視点があります。
製品開発生産性向上
開発リードタイム削減の次のテーマが、製品開発の生産性向上です。市場投入製品のヒットと製品開発効率性の向上です。
競争が激しいマーケットで、持続的な成長を確実にするために、製品開発/生産技術の網羅的かつ構造的な取り組みが行われています。
このために、製品開発/生産技術の網羅的かつ構造的な見直しと再定義を行うのが、アーキテクチャに基づく開発です。
・先端先行開発の管理によるアーキテクチャの設計開発
・商品製品戦略とポートフォリオ管理
・ハード、ソフトとサービスを網羅したのライフサイクルの品質とコストを改善するためのコンフィグレーション管理と開発プロセス管理
・生産技術と販売物流サービスとのクローズドループの仕組みによるフロントローディング
・組織能力の向上のためのインフラなど
多面的な要素を構造的に見直すことが求められています。
モデルベース開発:MBD
モデルベース開発:MBD などCAE, computer aided engineeringの適用が進んでいます。これは、モデルによりシミュレーションで結果のフィードバックを得ます。
これに加え、実際のマーケットで顧客からのフィードバックを得ることが重要です。これまで、VOC, voice of customerという概念で、取り組みがなされてきましたが、ネットワーク時代のIoT などの新たな技術により、網羅的なフィードバックを得ることが可能となってきており、これにより本来あるべきクローズドループが実現されようとしています。
トヨタにおけるPDCA
元来、PDCAは品質管理 QC の領域で使われてきた管理手法です。
これが日本の多くの企業では、経営管理においても適用されています。そこでは、管理部門と現場を分け、管理部門が計画 plan し、現場が実行 do し、その結果を確認統制 check して、また行動 acti するサイクルになっています。ここでは実行するのが先で、その結果のフィードバックを得ることに焦点を当てています。
PDCAはトヨタ生産方式TPSにおいて、現場のSQC活動で自ら計画し実行結果を検証する際に使われています。これ以上ではありません。
その他の要素はOODAループの思想が根付いています。例えば、会議室ではなく、現地現物や何故何故でお客様を中心に本質に切り込んでいく発想法です。現地現物で判断がなされています。
組織能力
マーケットの声などの環境からのフィードバックに感知能力を総動員し、情勢判断をしています。
例えば、一般的に品質問題の7割以上の原因が、既にこれまでに起きていたものであリます。新たな製品技術の投入に対するフィードバックに加え、従前からの製品に関わるフィードバックを含めた、網羅的なフィードバックが重要となっています。
LAMDAサイクル
トヨタ生産方式を中心としたトヨタウェイを元にアメリカで適用されている理論がリーンです。生産方式はリーン生産方式、製品開発はリーン製品開発といわれています。
リーン製品開発において、トヨタ開発方式TDSを元に提言されているのが、PDCAサイクルにOODAループの考え方を取り込んだLAMDAサイクルです。
しかしLAMDAサイクルは手順に基づいた手法です。人間的要素をも対象としたOODAループとは異なります。
OODAループ
米軍ジョンボイド大佐は、ここに紹介しましたように、トヨタ生産方式、トヨタ開発方式からなるトヨタウェイを高く評価されトヨタウェイに基づいてOODAループを提言しています。
OODAループの組織への適用法を解説した書籍が「「すぐ決まる組織」のつくり方 ー OODAマネジメント」です。ビジネス適用の実績にもとづく世界初の書籍になります。
お問い合わせ
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著者:アイ&カンパニー 入江仁之
出典:本論文は2005年以来のOODAループ実装結果に拠る提言です。
脚注:本論文はビジネスにおけるPDCAとOODAループの適用について議論しています。
私たちは、OODAループを広義のOODAループ理論つまりジョンボイド理論として定義しています。PDCAの品質統制への適用について議論するものではございません。
本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
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