PDCAサイクル:問題点と致命的欠点

PDCAサイクルとは、製品と業務を継続的に改善することを目的にしています。

 Plan       :   計画
 Do          :   実行
 Check    :   評価
 Act         :   改善
の段階を繰り返し回します。

本稿では、PDCAサイクルの顕在化してきた問題点そして致命的欠点を紹介します。

PDCA:概要と実際」については、こちらを参照してください。


PDCAが日本を壊す

日本企業の偽装が後を絶ちません。品質に関係する検査の不正と検査データの改ざんが横行しています。偽装は会計不正による利益数値の操作にまで及んでいます。

「PDCAを回せ」という上司の指示で、現場の本質を見極める力がそがれ、仕事に対する姿勢が形骸化していきます。

現場の多くの人が、PDCAが回らないと感じています。PDCAは理念が先行し現場では必ずしもうまく使われていません。

・計画倒れで実行に移されていません。

・実行した後のチェックが疎かになっています。

・計画が達成されても既に状況が変わってしまっていることもあります。

経営者や管理職は、このPDCAを回せない原因が現場がPDCAを理解していないことによるといいます。速く回さなくてはならないと。そして現場にPDCAの勉強を迫ります。こうして成果なきPDCA信奉が無理強いされていきます。


ガラパゴスPDCA

PDCAサイクルを仕事全般に使っているのは世界で日本だけです

PDCAと欧米人に言っても伝わりません。欧米企業のマネジメントでPDCAは使われていません。PDCAは日本特有のものです。

ガラパゴスPDCA」については、こちらを参照してください。


日本企業の現場の実態

PDCAサイクルは現場ではどのようになっているか、以下、PDCAの実態を見ていきます。

日本企業の現場では、以下のように部下が準備して上司が突き返す仕事が延々と続いて、モノゴトが前に進みません。

P:計画を現場から離れた会議室で作る →

D:部下:資料作成 →

C:上司:これじゃダメだ →PD

C:上司:やっぱりダメ →PD

C:あの案件はどうなった?誰の責任だ?と責任追及

最悪の場合、スピードが遅いと責任追及されて、PDCAを高速で回せと言われています。上司からの理不尽なプレッシャーから若者の士気が下がっていきます。

PDCAでは、形式化、形骸化、そして硬直化した悪習を増長させます。中には、経営破綻に至った企業もあります。

有能な20代の若者が、このような環境で夢をなくし能力を発揮できないでいたり、ベンチャーに転職したりしています。

PDCAを回すということは、イノベーションに足かせをはめることになりかねません。

このような状況で、意識が高い人たちは、PDCAという用語にこだわらないのがいいといわれています。そこで目指されている思考はOODAになっているようです。


日本の政治の実態

PDCAによる政治では、以下のように事業評価から予算編成、事業計画と議会承認された後は、計画がうまくいっているかのチェックに止まっています。

P:予算を議会で承認される →

D:議会はさておき行政側で勝手に進めよう →

C:後になって議会がチェックして食い止める →

A:選挙民の意見は反映されない

環境や情況が変わってしまい計画自体の見直しをしなくてはならないことになった段階でマスコミに取り上げられ、大騒ぎになります。時すでに遅しという事態になってから議論が始まります。行政は前例主義で従来の狭い考えに凝り固まっていることが多くあります。予算、計画至上主義に限界があります。

PDCAを回すということは、考えや法規制に反することをチェックしてモノゴトの推進を食い止めることです。

目指すべき世界・夢・ビジョンを掲げ、ビジョン実現のための政策を議論する。政策の実行においてはビジョン実現のために情況に応じて柔軟に見直す。そして目指す世の中を実現して行く。このような活動を政治が主導して進めて行く必要があります。

明るい未来を実現して行くためにはPDCAでは役不足です。


シン・ゴジラ:日本政府の実態

日本映画の「シン・ゴジラ」。登場する想定外の巨大未確認生物、ゴジラに対して日本が総力戦で挑みます。

しかし、日本の政治行政機構の問題点を露呈し甚大な被害を被ります。まさに、政治と行政システムの実態を赤裸々に描くことを通してPDCAの限界を明らかにしています。


PDCAの問題点

PDCAが回らない理由は、「PDCAの回し方」や「自分の至らなさ」ではありませんでした。PDCAに問題がありました。PDCAを回すこと自体に問題があったのです。

本稿ではPDCAの問題点と致命的欠点を事例を交えて、わかりやすくまとめます。

次にPDCAの問題点について見ていきましょう。


PDCAを「速く」回しても、「早く」なかったら無意味

ピザのデリバリの事例

ピザのデリバリを頼んで、ピザ屋さんが高速でPDCAを回し調理して、高速でPDCAを回して配達しても、お客から見るとどうでもいいことです。トータルで時間がかかって配達が遅いと頼みません。思い立ったら早く届けて欲しいのです。

PDCAを高速で回しているピザ屋さんでは、PDCAにより、調理や配達の計画を最初にします。スタッフや食材の手配をしたり、スタッフの間の段取りやスケジュール調整をしたりといった作業を計画します。

しかし、注文の殺到、従業員の病欠や欠勤、食材の不足、配達用バイクの故障や出払い、道路渋滞や通行止めなどで計画通り配達ができなくなります。

こうなると、高速にPDCAを回そうとしても回りません。

配達のスタッフは、決められた通りに出勤して指示された通りに配達したのに遅くなってしまいます。お客様は注文を取り消し、配達員は謝罪に追われます。

お客様は早く届けてもらいたいのです。希望の時刻に届けて欲しいのです。


 PDCAを「速く」回しても、遅延し取消し謝罪
 

計画しても実行結果をチェックして計画を見直しても、そしてPDCAを高速で回転させても、いつまでも実行を伴わないことが起きています。

このPDCAという四つの用語に忠実に従うと大変な過ちを犯してしまうことになります。これがPDCAは意味がないとまでいわれている理由です。

このため、PDCAは、
 Plan             :  計画
 Delay           :  
遅延
 Cancel         :  取消
 Apologize  : 謝罪
と揶揄されたりしています。

折角の有能な経営者や従業員が、期待値調整のうえの合意形成に終始して、お客様視点が放置されているのです。

PDCAの呪縛に囚われている限り、早くはなりません。


感知の問題点

昨今のグローバルでの大型案件が新興国に敗退するケースが増えて来ています。例えば、国をあげて取り組んだ親日国トルコの「世界最長橋建設プロジェクト」受注競争では韓国に敗れました。これらの受注競争をみると、日本は品質さえよければ勝てると高を括っていたのが敗因と考えられます。

この案件では、競争情況、競争相手についての諜報活動をしたり、お客様に入り込んでお客様の期待している価値を感知したりすることが必要になっていたのです。

品質以外の様々な要因が競争要因になっています。これまでの想定を打破するためにも、PDCAの想定から脱却して、感知、情勢判断をする必要性がでてきています。

品質以外の要素で勝ち残っている中国や韓国の活動は、感知、情勢判断において日本よりも長けています。PDCA絶対の思考では、全体像を見失います。


想定外への対処の問題点

PDCAのもう一つのリスクは予期せぬこと「想定外 Unexpected」を見逃すことです。PDCAは計画が前提にあり内外の環境感知と情勢判断の過程がおろそかになっています。

人間は潮目の変化に気づいても、それが何か納得しないと行動に移れない側面があります。行動の後のチェックで変化を気づいても手遅れです。変化が何かを見極め、直観も含めて決定(Decide)することをプロセスとして定めておかないと組織として対応するのは難しいのではないでしょうか。


計画の問題点

計画の妥当性

PDCAサイクルでは、まず最初に計画 Plan を策定することが前提となっています。計画策定後に計画策定の前提が変化することがあります。前提が変わってしまっては計画は妥当でなくなっています。

また、計画策定自体が困難であっても計画策定を強要しているために、不完全な計画を作ったり、結果的に無駄になる計画策定に時間を要したりしています。

加えて、計画策定の時に過去の経験や合意した想定しか考慮できません。

計画の必要性

PDCA信者のなかには、計画策定時にそれまでの行動のフィードバックしか考慮しないから悪いのであって、変化する内外環境を洞察して計画すればPDCAでいけるという意見もあります。そのとおりで環境を観察することが重要です。

しかし、そのあとに計画を作ることが必ずしも要るのかは場合によります。計画を策定することが目的ではありません。方針を決めるだけで実行することが効果的な場合もあります。


評価チェックの問題点

評価つまりチェック Check の段階に至って現場からのフィードバックを聞きアクションを取りますが、それは計画を実行 Do した後のことです。

最初の計画の段階で現場と乖離した方針が決められてしまうと、方針転換をするには余計な労力が必要となります。このPDCAサイクルで取り決めたサイクルを回している間に、致命的な事態に至るリスクがあります。計画を前提としたサイクルを高速回転しても根本的な問題を解決できません。


組織文化・風土の課題

また、PDCAでは評価 Check をして改善 Act をするとしていますが、特に多くの日本企業にある失敗を責任追及、犯人探しに結びつける文化では、評価、改善は実態として機能するのが難しいのです。

組織的に学ぶ環境(これを私どもはナレッジマネジメントと呼びます)を明示的に内包する必要があります。


PDCAの歴史

PDCAの生みの親といわれているデミングは、PDCAの誤りを指摘していました。

PDCAの歴史」の詳細については、こちらを参照してください。


トヨタのPDCA?

一般にPDCAサイクルはトヨタだと喧伝されています。しかし、その実態は違いました。

OODA:トヨタのPDCA」については、こちらを参照してください。

PDCAサイクルの問題点を回避するために、トヨタ開発方式TDSやOODAループの考え方を取り込み改善したものにLAMDAサイクルというものがあります。

「トヨタ開発方式TDS」の詳細については、こちらを参照ください。

「LAMDAサイクル」の詳細については、こちらを参照ください。


PDCAの致命的欠点

PDCAには致命的欠点があります。


PDCA見直しの限界

激変環境の今日、旧来から特に日本で重用されてきたPDCAだけでは生き残れません。PDCA信奉者は、PDCAの一部見直し強化で凌ごうとしています。PDCAを回す前に、EDCAそしてSDCAが必要だとされます。これをEDCA – SDCA – PDCAサイクルといいます。

EDCA – SDCA – PDCAサイクル」の詳細については、こちらを参照ください。

しかしPDCAに振り回され、古いPDCAの世界から脱却できないでいます。変化する環境ではPDCAのコンセプト自体が限界にきています。クネビンフレームワークの中の秩序の世界に限って当てはまります。


状況の変化:VUCA

不安定、不確実、複雑そして曖昧なのが今の世界です。これをあらわすVUCAという用語が注目されています。VUCAが今の世界を表しているためです。

このVUCAを構造的に整理して対応する方法を考えておく必要があります。私たちが日常、どのような状況ではどのように考えて行動したらいいかを明らかにするのがVUCAフレームワークです。どのような状況下でどのような判断をし行動をしたらいいかを示しています。

このフレームワークにより、想定外のことが起こる変わり続ける世界ではPDCAのコンセプト自体が当てはまらないことが示されています。

VUCAフレームワーク」の詳細は、こちらに紹介しています。


戦略の柔軟性

戦略の計画を立てても、実際にそれが成功するかは結果を見ないとわかりません。環境との相互作用で戦略を柔軟に見直す必要があります。


俊敏性の必要性

加えて、PDCAは、環境変化に対応するため、あるいは、計画の妥当性を検証するため、高速で回せば PDCAでいけるという意見もあります。

しかし「戦時」の先取必勝の勝負では、その速度の高速化ではなく、変化する状況と認識を早期に一致させ、臨機応変に即断し即応することが必要です。

これが「OODA」です。光速OODAが問題を解決します。


OODA関連論文の公開

日本が再興するためにお役に立ちたいと考え、本稿等の論文を公開します。

OODAに関する主な論文とその要約は、こちらを参照してください。


OODA研修セミナー

OODAを紹介する研修セミナーの詳細については、こちらを参照ください。


OODA本の出版:アンケートのお願い

OODAの考え方を日本の企業や組織に浸透していくことを期待する声が高くなってきています。このような要望に応えるために、OODA本の構想を練ってまいりました。

現在、みなさま方と一緒に書籍を作って行くために、本の内容についてご要望ご意見などをお伺いしております。

アンケート」をこちらにてお願いします。ホワイトペーパーをお礼に贈呈します。


お問い合わせ

「研修セミナー」「講演」「経営コンサルティング」「助言」などのお問い合せは、こちらへお願いいたします。

著者:アイ&カンパニー 入江仁之
脚注:本論文はPDCAの品質統制QCでの適用について議論をするものではございません。
脚注:本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
脚注OODA研修セミナーのご詳細はこちらを参照してください。
出典:本論文の参考文献こちらを参照ください。
© 2015,2016,2017,2018  I & COMPANY or its affiliates. All rights reserved.