「PDCAサイクル」:問題点と致命的欠点

致命的に遅いスピード

日本企業は、欧米をはじめとした海外の企業と比べて、致命的にスピードが遅いです。

これは、日本人の多くが持っている特有の思考法PDCAに原因があります。事前に十分に検討をして関係者に根回しをして合意をとり問題が無いと確証を得た後に事に当たるのが当たり前になっています。

仕事に対する熱意の消失

大半の日本人は仕事では指示待ちになっています。仕事に熱意を持って取り組んでいる社員の比率は6%で、139か国中132位と最下位水準です(米ギャラップ社2017年仕事への熱意(エンゲージメント)国際比較)。これも計画に基づいて指示されて評価されるという思考が影響しています。

分析中心前例主義

検討内容が十分か? 上司は自分の責任回避のために、計画段階で部下に念押しをします。部下も責任を取りたくないので、前例があることを重視し、十分に分析して検討を加え計画を立てます。分析中心前例主義です。

ポジティブリスト制度

また、これがいいと言われたことだけをします。ポジティブリスト制度です。これだけはダメというネガティブリスト制度のように、ダメなこと以外はなんでもチャレンジしていいという発想にはなりません。

過剰品質

このような仕事の仕方は過剰に時間を浪費するだけでなく、過剰品質をもたらします。動き出した頃には遅きに失っしています。

減点評価

計画や目標を基準に評価されるため、知らず知らずのうちに減点評価になっている組織が多くあります。中にいる人たちは減点評価による弊害に気づかずにいます。

日本だけの特殊性

「PDCAを回せ」と叫ばれているのは日本だけです。アメリカ人や中国人など海外の知識人からは、PDCAが日本のガラパゴス化の原因だと指摘されています。


本稿では、PDCAサイクルの顕在化してきた問題点そして致命的欠点を紹介します。


PDCA病

日本企業が致命的に遅いのは、PDCA病が原因です。PDCAの順番にとらわれた形骸化した手続きがスピードを遅らせます。計画を立ててから実行しチェックして確かめることを課します。

元来、PDCAは統計的品質統制の世界の概念でありました。このことから、感情や野生的な感性、直観などの人間的な要素が考慮されていません。

この日本人特有の思考法が固定観念になってしまっています。意識改革をしようとしても変わらず岩盤の制約になります。

スピードが遅くなり遅延が問題になることから、上層部からPDCAサイクルを高速で回せとプレッシャーがかけられます。

しかし、PDCAは速く回せたとしてもPDCAの手順を踏んでいる限り、海外の企業と比べるとスピードが遅くなります。

これ以上に大問題なのが、PDCAに邁進することに気を取られて、コトの本質を見失っていることです。激変する環境を見ることを忘れ、潮目の変化に気づかず、気付いた時には「あとの祭り」となっています。


PDCAが日本を壊す

日本企業の偽装が後を絶ちません。品質に関係する検査の不正と検査データの改ざんが横行しています。偽装は会計不正による利益数値の操作にまで及んでいます。

「PDCAを回せ」という上司の指示で、現場の本質を見極める力がそがれ、仕事に対する姿勢が形骸化していきます。

現場の多くの人が、PDCAが回らないと感じています。PDCAは理念が先行し現場では必ずしもうまく使われていません。


PDCAが回らない8つの理由

企画側からは、PDCAを回せない原因が現場がPDCAを理解していないことによるといいます。速く回さなくてはならないと。そして現場にPDCAの勉強を迫ります。こうして成果なきPDCA信奉が無理強いされていきます。

経営者や管理職、本社の企画部門の認識:

  • 計画が立てられません:情報収集に時間がかかり、情報が不十分で、確かなことが分かりません。
  • 計画倒れで実行に移されていません:環境が変わってしまって計画通りに進みません。
  • 実行した後のチェックが疎かになっています。:チェックは責任追及になります。
  • 計画が達成されても既に状況が変わってしまっています:計画自体が要りません。

組織の現場の認識:

  • 上層部から計画が降りてきますが、現場のことを知らない者が作った計画に反感を覚えます。
  • 現場は計画で想定していたのとは違い、想定していた現場の能力がなく計画が進みません。
  • 前例が優先され、新しいアイデアを出しても採用されません。
  • 現場、そしてお客様の意見は二の次になっています。

デミングもPDCAを否定していた

英語が分かる方であれば、Plan, Do Check, Action Cycle というPDCAサイクルが英語としておかしいと気づくはずです。日本では、PDCAはデミングがアメリカから来て紹介したと信じられています。

しかし、最近は、PDCAの真実が知れ渡って来ていました。実は、PDCAは日本人が作りました。加えて、デミングは最後までPDCAの問題点を指摘していたのです。


ガラパゴスPDCA

PDCAサイクルを仕事全般に使っているのは世界で日本だけです。

PDCAと欧米人に言っても伝わりません。欧米企業のマネジメントでPDCAは使われていないのです。PDCAは日本特有のものです。


企業の現場の実態

PDCAサイクルは現場ではどのようになっているか、以下、PDCAの実態を見ていきます。

日本企業の現場では、以下のように部下が準備して上司が突き返す仕事が延々と続いて、モノゴトが前に進みません。

Plan   現場から離れた会議室で計画が作られる

Do      会議に出ていた上司からの指示で部下が資料作成することに

Check上司が部下の資料をチェック!これじゃダメだPlan→Do→

Check上司がダメ押しPlan→Do→

Check上司からスピードが遅いと責任追及され、PDCAを速く回せとゲキを飛ばされる。

上司からの理不尽なプレッシャーから若者の士気が下がっていきます。

PDCAでは、形式化、形骸化、そして硬直化した悪習を増長させます。中には、経営破綻に至った企業もあります。

20代の若者が、このような会社で夢をなくし能力を発揮できないでいます。有能なものは、入社後まもなくしてベンチャーに転職したりしています。

PDCAを回すということは、イノベーションに足かせをはめることになりかねません。

このような状況で、意識が高い人たちは、PDCAという用語に疑問を持ち出しています。そこで注目されだしている思考法がOODAです。OODAはPDCAの救世主のような存在になってきています。


教育現場の実態

2000年代、ビジネスの世界から少し遅れて、教育界にも統計的品質統制の技法PDCAが入ってきました。

教育現場で、文科省や組織の上層部からPDCAサイクルを回すようにと指示されています。

教育現場ではどのようになっているか、PDCAの実態を見ていきます。

Plan   教育現場から離れた会議室で計画が作られる →

Do      現場の教員は上から降りてきた教科や単元などにしたがい教えようとする →

Check子どもたちの心は離れていく。これじゃダメだ →Plan→Do→

Checkダメ押し →Plan→Do→

Check上からの資料にはPDCAを回せと。。。

子どもたちが、これからの社会で、言われたことを従順に行う人間になったところで、生きていけるのか。子どもを中心において授業をしていくことが必要だ。と現場の教師たちが悩まれています。問題意識を持った教師は、OODAの導入に取り組もうとされています。


政治の実態

PDCAによる政治では、以下のように事業評価から予算編成、事業計画と議会承認された後は、計画がうまくいっているかのチェックに止まっています。

Plan    予算を議会で承認される

Do       議会はさておき行政側で勝手に進めよう

Check 後になって議会がチェックして食い止める

Act      選挙民の意見は反映されない

環境や情況が変わってしまい計画自体の見直しをしなくてはならないことになった段階でマスコミに取り上げられ、大騒ぎになります。時すでに遅しという事態になってから議論が始まります。行政は前例主義で従来の狭い考えに凝り固まっていることが多くあります。予算、計画至上主義に限界があります。

PDCAを回すということは、考えや法規制に反することをチェックしてモノゴトの推進を食い止めることです。

目指すべき世界・夢・ビジョンを掲げ、ビジョン実現のための政策を議論する。政策の実行においてはビジョン実現のために情況に応じて柔軟に見直す。そして目指す世の中を実現して行く。このような活動を政治が主導して進めて行く必要があります。

明るい未来を実現して行くためにはPDCAでは役不足です。


シン・ゴジラ:日本政府の実態

日本映画の「シン・ゴジラ」。登場する想定外の巨大未確認生物、ゴジラに対して日本が総力戦で挑みます。

しかし、日本の政治行政機構の問題点を露呈し甚大な被害を被ります。まさに、政治と行政システムの実態を赤裸々に描くことを通してPDCAの限界を明らかにしています。


PDCAの問題点

PDCAが回らない理由は、「PDCAの回し方」や「自分の至らなさ」ではありませんでした。PDCAに問題がありました。PDCAを回すこと自体に問題があったのです。

本稿ではPDCAの問題点と致命的欠点を事例を交えて、わかりやすくまとめます。

次にPDCAの問題点について見ていきましょう。


PDCAを「速く」回しても、「早く」なかったら無意味

ピザのデリバリの事例

ピザのデリバリを頼んで、ピザ屋さんが高速でPDCAを回し調理して、高速でPDCAを回して配達しても、お客から見るとどうでもいいことです。トータルで時間がかかって配達が遅いと頼みません。思い立ったら早く届けて欲しいのです。

PDCAを高速で回しているピザ屋さんでは、PDCAにより、調理や配達の計画を最初にします。スタッフや食材の手配をしたり、スタッフの間の段取りやスケジュール調整をしたりといった作業を計画します。

しかし、注文の殺到、従業員の病欠や欠勤、食材の不足、配達用バイクの故障や出払い、道路渋滞や通行止めなどで計画通り配達ができなくなります。

こうなると、高速にPDCAを回そうとしても回りません。

配達のスタッフは、決められた通りに出勤して指示された通りに配達したのに遅くなってしまいます。お客様は注文を取り消し、配達員は謝罪に追われます。

お客様は早く届けてもらいたいのです。希望の時刻に届けて欲しいのです。


 PDCAを「速く」回しても、遅延し、取消し、謝罪する

計画しても実行結果をチェックして計画を見直しても、そしてPDCAを高速で回転させても、いつまでも実行を伴わないことが起きています。

このPDCAという四つの用語に忠実に従うと大変な過ちを犯してしまうことになります。これがPDCAは意味がないとまでいわれている理由です。

このため、PDCAは、
Plan             :  計画
Delay           :  遅延
Cancel         :  取消
Apologize   謝罪
と揶揄されたりしています。

折角の有能な経営者や従業員が、期待値調整のうえの合意形成に終始して、お客様視点が放置されているのです。

PDCAの呪縛に囚われている限り、早くはなりません。


世の中の変化に置いていかれる:状況認識の問題点

昨今のグローバルでの大型案件が新興国に敗退するケースが増えて来ています。例えば、国をあげて取り組んだ親日国トルコの「世界最長橋建設プロジェクト」受注競争では韓国に敗れました。これらの受注競争をみると、日本は品質さえよければ勝てると高を括っていたのが敗因と考えられます。

この案件では、競争情況、競争相手についての諜報活動をしたり、お客様に入り込んでお客様の期待している価値を感知したりすることが必要になっていたのです。

品質以外の様々な要因が競争要因になっています。これまでの想定を打破するためにも、PDCAの想定から脱却して、感知、情勢判断をする必要性がでてきています。

品質以外の要素で勝ち残っている中国や韓国の活動は、感知、情勢判断において日本よりも長けています。PDCA絶対の思考では、全体像を見失います。


想定外へ対処できない

PDCAのもう一つのリスクは予期せぬこと「想定外 Unexpected」を見逃すことです。PDCAは計画が前提にあり内外の環境感知と情勢判断の過程がおろそかになっています。

人間は潮目の変化に気づいても、それが何か納得しないと行動に移れない側面があります。行動の後のチェックで変化を気づいても手遅れです。変化が何かを見極め、直観も含めて決定(Decide)することをプロセスとして定めておかないと組織として対応するのは難しいのではないでしょうか。


計画の問題点

計画の妥当性

PDCAサイクルでは、まず最初に計画 Plan を策定することが前提となっています。計画策定後に計画策定の前提が変化することがあります。前提が変わってしまっては計画は妥当でなくなっています。

また、計画策定自体が困難であっても計画策定を強要しているために、不完全な計画を作ったり、結果的に無駄になる計画策定に時間を要したりしています。

加えて、計画策定の時に過去の経験や合意した想定しか考慮できません。

計画の必要性

PDCA信者のなかには、計画策定時にそれまでの行動のフィードバックしか考慮しないから悪いのであって、変化する内外環境を洞察して計画すればPDCAでいけるという意見もあります。そのとおりで環境を観察することが重要です。

しかし、そのあとに計画を作ることが必ずしも要るのかは場合によります。計画を策定することが目的ではありません。方針を決めるだけで実行することが効果的な場合もあります。


評価チェックの問題点

評価つまりチェック Check の段階に至って現場からのフィードバックを聞きアクションを取りますが、それは計画を実行 Do した後のことです。

最初の計画の段階で現場と乖離した方針が決められてしまうと、方針転換をするには余計な労力が必要となります。このPDCAサイクルで取り決めたサイクルを回している間に、致命的な事態に至るリスクがあります。計画を前提としたサイクルを高速回転しても根本的な問題を解決できません。


組織文化・風土の課題

また、PDCAでは評価 Check をして改善 Act をするとしています。しかし、特に失敗の責任を追及し、犯人(生け贄)探しを行うような空気があると、評価、改善はかえって組織の活力を削いでしまいます。

多くの日本の組織そして社会に責任を取らせるという悪い風習があります。意図的に組織改革をしていかないと、このような風土が助長されます。

組織的に学ぶ環境(これを私どもはナレッジマネジメントと呼びます)を明示的に内包する必要があります。


トヨタのPDCA?

一般にPDCAサイクルはトヨタだと喧伝されています。

しかし、その実態は違いました。トヨタも経営幹部はOODAだと言われています。

トヨタがやっているからPDCAを使えば安心だというのは誤解でした。

PDCAサイクルの問題点を回避するために、トヨタ開発方式TDSやLAMDAサイクルというものも出てきています。OODAループの考え方を取り込み改善しています。結局、OODAループが有効ということです。


PDCAの致命的欠点

PDCAには致命的欠点があります。


PDCAの見直しの限界

激変環境の今日、旧来から特に日本で重用されてきたPDCAだけでは生き残れません。PDCA信奉者は、PDCAの一部見直し強化で凌ごうとしています。PDCAを回す前に、EDCA(Explore Do Check Act)そしてSDCA(Standardize Do Check Act )が必要だとされます。これをEDCA – SDCA – PDCAサイクルといいます。

しかしPDCAに振り回され、古いPDCAの世界から脱却できないでいます。変化する環境ではPDCAのコンセプト自体が限界にきています。VUCAの今の世界では適応できません。VUCAではない安定した秩序の世界に限って当てはまるのです。


状況の変化:VUCA

不安定、不確実、複雑そして曖昧なのが今の世界です。これをあらわすVUCAという用語が注目されています。VUCAが今の世界を表しているためです。

このVUCAを構造的に整理して対応する方法を考えておく必要があります。私たちが日常、どのような状況ではどのように考えて行動したらいいかを明らかにするのがVUCAフレームワークです。どのような状況下でどのような判断をし行動をしたらいいかを示しています。

このVUCAフレームワークにより、想定外のことが起こる変わり続ける世界ではPDCAのコンセプト自体が当てはまらないことが示されています。


戦略の柔軟性

戦略の計画を立てても、実際にそれが成功するかは結果を見ないとわかりません。環境との相互作用で戦略を柔軟に見直す必要があります。


俊敏性の必要性

加えて、PDCAは、環境変化に対応するため、あるいは、計画の妥当性を検証するため、高速で回せば PDCAでいけるという意見もあります。

しかし「戦時」の先取必勝の勝負では、その速度の高速化ではなく、変化する状況と認識を早期に一致させ、臨機応変に即断し即応することが必要です。


PDCAの致命的欠点の解消策は?

どんなに頑張っても、頑張り方が間違っていたら成功しません。頑張れば成功した安定した環境は過去のものになってしまいました。その時代にうまく行ったPDCAが、今は足かせにすらなっています。

PDCAを過大に信仰する病、PDCA病は、日本のこの閉塞した状況を生んでいる原因になっています。

このように多くの問題があるPDCAの致命的な欠点を補完してくれるのがOODAループです。光速で判断し行動できるOODAの思考法が問題を解決します。アメリカをはじめ先進国で主流の考え方です。

日本の風土病となってしまったPDCA病を治すためにも、OODAループが普及する必要があると考えています。


OODAループの出現

PDCAは、計画 Plan して実行 Do してチェック Check した後にやっと行動 Actする。PDCAを速く回すといっても、計画して実行してチェックした後に行動です。無理があります。

行動Actionをするための思考法を考える必要があります。

計画やマニュアル通りに行動してはいけません。現場で現実をみて、わかったら、うごくのです。

この考え方を具体化したのがOODAループです。世界の軍事戦略を一変させました。そして、世界のビジネス界で普及しています。シリコンバレーをはじめとして、ビジネスの戦略の主流になっています。


PDCAの修正、PDCAの補完、そしてPDCAを置き換える

最近普及しているPDCA本は、元の品質管理のPDCAから変わってきています。品質管理のPDCAの限界を克服しようとして各々著者の経験・知見から独自のPDCAを作っています。自ら、我流PDCAであるとおっしゃられている方もいます。目標を決めて高速でPDCAを回転するなどと提言されています。

また、PDCAの順番を変える提言をされている方々もいます。CAPDなどです。

OODAループを理解した人が、これら我流PDCAを見ると、PDCAから離れて、OODAループに近づいているのがわかります。

このように致命的な問題を抱えたPDCAではなく、OODAループを普及させることが求められます。

PDCAの問題にどのように対処したらいいかを具体的に書きました書籍を刊行しました。『「すぐ決まる組織」のつくり方:OODAマネジメント』です。

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「すぐ決まる組織」のつくり方
OODAマネジメント
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著者:アイ&カンパニー 入江仁之
出典:本論文は2005年以来のOODA実装結果に拠る提言です。参考文献はこちらです。
脚注:本論文はPDCAの品質統制への適用について議論するものではございません。
脚注:本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております
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