PDCAサイクル:問題点と致命的欠点

PDCAサイクルとは、製品と業務を継続的に改善することを目的にし、
 Plan        :  計画
 Do            :    実行
 Check     :  評価
 Act          :  改善
の段階を繰り返し回す方法です。

PDCAサイクル」の概要と実際の事例については、こちらを参照してください。


PDCAが日本を壊す

日本企業の偽装が後を絶ちません。品質に関係する検査の不正と検査データの改ざんが横行しています。偽装は会計不正による利益数値の操作にまで及んでいます。

「PDCAを回せ」という上司の指示で、現場の本質を見極める力がそがれ、仕事に対する姿勢が形骸化していきます。

現場の多くの人が、PDCAが回らないと感じています。PDCAは理念が先行し現場では必ずしもうまく使われていません。

・計画倒れで実行に移されていません。

・実行した後のチェックが疎かになっています。

PDCAはこのPDCAという四つの用語に忠実に従うと大変な過ちを犯してしまうことになります。これがPDCAは意味がないとまでいわれている理由です。

このため、PDCAは、
 Plan             :  計画
 Delay           :  
遅延
 Cancel         :  取消
 Apologize  : 謝罪
と揶揄されたりしています。

管理職は、このPDCAを回せない原因がPDCAを理解していないことによるといいます。速く回さなくてはならないと。そして上司は部下にPDCAの勉強を迫ります。こうして成果なきPDCA信奉が無理強いされていきます。

ところが、PDCAが回らない理由は、「PDCAの回し方」や自分の至らなさではありませんでした。PDCAに問題がありました。PDCAを回すこと自体に問題があったのです。


PDCAの問題点

本稿ではPDCAの問題点と致命的欠点を事例を交えて、わかりやすくまとめます。

次にPDCAの問題点について見ていきましょう。


感知の問題点

昨今のグローバルでの大型案件が新興国に敗退するケースが増えて来ています。例えば、国をあげて取り組んだ親日国トルコの「世界最長橋建設プロジェクト」受注競争では韓国に敗れました。これらの受注競争をみると、日本は品質さえよければ勝てると高を括っていたのが敗因と考えられます。

この案件では、競争情況、競争相手についての諜報活動をしたり、お客様に入り込んでお客様の期待している価値を感知したりすることが必要になっていたのです。

品質以外の様々な要因が競争要因になっています。これまでの想定を打破するためにも、PDCAの想定から脱却して、感知、情勢判断をする必要性がでてきています。

品質以外の要素で勝ち残っている中国や韓国の活動は、感知、情勢判断において日本よりも長けています。PDCA絶対の思考では、全体像を見失います。


想定外への対処の問題点

PDCAのもう一つのリスクは「想定外の予期せぬこと(Unexpected)」を見逃すことです。PDCAは計画が前提にあり内外の環境感知と情勢判断の過程がおろそかになっています。

人間は潮目の変化に気づいても、それが何か納得しないと行動に移れない側面があります。行動の後のチェックで変化を気づいても手遅れです。変化が何かを見極め、直観も含めて決定(Decide)することをプロセスとして定めておかないと組織として対応するのは難しいのではないでしょうか。


計画の問題点

計画の妥当性

PDCAサイクルでは、まず最初に計画(Plan)を策定することが前提となっています。計画策定後に計画策定の前提が変化することがあります。前提が変わってしまっては計画は妥当でなくなっています。

また、計画策定自体が困難であっても計画策定を強要しているために、不完全な計画を作ったり、結果的に無駄になる計画策定に時間を要したりしています。

加えて、計画策定の時に過去の経験や合意した想定しか考慮できません。

計画の必要性

PDCA信者のなかには、計画策定時にそれまでの行動のフィードバックしか考慮しないから悪いのであって、変化する内外環境を洞察して計画すればPDCAでいけるという意見もあります。そのとおりで環境を観察することが重要です。

しかし、そのあとに計画を作ることが必ずしも要るのかは場合によります。計画を策定することが目的ではありません。方針を決めるだけで実行することが効果的な場合もあります。


評価チェックの問題点

評価つまりチェック(Check)の段階に至って現場からのフィードバックを聞きアクションを取りますが、それは計画を実行(Do)した後のことです。

最初の計画の段階で現場と乖離した方針が決められてしまうと、方針転換をするには余計な労力が必要となります。このPDCAサイクルで取り決めたサイクルを回している間に、致命的な事態に至るリスクがあります。計画を前提としたサイクルを高速回転しても根本的な問題を解決できません。


組織文化・風土の課題

また、PDCAでは評価(Check)をして改善(Act)をするとしていますが、特に多くの日本企業にある失敗を責任追及、犯人探しに結びつける文化では、評価、改善は実態として機能するのが難しいのです。

組織的に学ぶ環境(これを私どもはナレッジマネジメントと呼びます)を明示的に内包する必要があります。


PDCAの歴史

PDCAの生みの親といわれているデミングは、PDCAの誤りを指摘していました。

PDCAの歴史」の詳細については、こちらを参照してください。


PDCAの致命的欠点

PDCAには致命的欠点があります。


PDCA見直しの限界

激変環境の今日、旧来から特に日本で重用されてきたPDCAだけでは生き残れません。PDCA信奉者は、PDCAの一部見直し強化で凌ごうとしています。PDCAを回す前に、EDCAそしてSDCAが必要だとされます。これをEDCA – SDCA – PDCAサイクルといいます。

EDCA – SDCA – PDCAサイクル」の詳細については、こちらを参照ください。

しかしPDCAに振り回され、古いPDCAの世界から脱却できないでいます。変化する環境ではPDCAのコンセプト自体が限界にきています。クネビンフレームワークの中の秩序の世界に限って当てはまります。


状況の変化:VUCA

不安定、不確実、複雑そして曖昧なのが今の世界です。これをあらわすVUCAという用語が注目されています。VUCAが今の世界を表しているためです。

このVUCAを構造的に整理して対応する方法を考えておく必要があります。私たちが日常、どのような状況ではどのように考えて行動したらいいかを明らかにするのがVUCAフレームワークです。どのような状況下でどのような判断をし行動をしたらいいかを示しています。

このフレームワークにより、想定外のことが起こる変わり続ける世界ではPDCAのコンセプト自体が当てはまらないことが示されています。

VUCAフレームワーク」の詳細は、こちらに紹介しています。


戦略の柔軟性

戦略の計画を立てても、実際にそれが成功するかは結果を見ないとわかりません。環境との相互作用で戦略を柔軟に見直す必要があります。


スピードの必要性

加えて、PDCAは、環境変化に対応するため、あるいは、計画の妥当性を検証するため、高速で回せば PDCAでいけるという意見もあります。しかし「戦時」の先取必勝の勝負では、その速度の高速化ではなく即断即応の「光速化」が勝敗を決します。


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著者:アイ&カンパニー 入江仁之
脚注:本論文はPDCAの品質統制での適用について議論をするものではございません。
脚注本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
出典:本論文の参考文献こちらを参照ください。
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