「OODAループ」:よくある誤解

最近はOODAループを知っている人は増えてきました。しかし、OODAについてまだ誤解がみられます。7つの誤解とその弊害を紹介します。


誤解 1:OODAループは四つのプロセス

OODAループは、OODAの四つのプロセスに加えて五つ目のループの五つから構成されています。これは、ジョンボイドが尊敬していた宮本武蔵の五輪書に因んでいるともいわれています。

ループにはみこす(フィードフォワード)とみなおす(フィードバック)があります。


誤解 2:PDCAは古い、OODAは新しい

PDCAは古い?

PDCAの歴史(詳細はこちらを参照ください)は、戦後1947年のPDSサークルと1950年のデミングサークルに基づいて1951年に日本科学技術連盟が提言した統計的品質統制管理SQCのPDCAサイクルから始まりました。

経営全般に使うようにと言われ始めたのは2000年以降です。

OODAは新しい?

OODAは、紀元前1600年に起きた「夏」を「殷」が倒した戦い以降の戦史を研究したものです。紀元前500年ごろ書かれた孫子の兵法、1645年ごろ書かれた宮本武蔵の五輪書(詳細はこちらを参照ください)などに基づいています。そして1996年にOODAループが発表されました。

つまり、PDCAは戦後の理論であるのに対して、OODAは有史以来の兵法の集大成です。OODAはすでにアメリカを中心に適用されてきています。


誤解 3:OODAを高速で回せ

誤解の一つが、PDCAと同様に単純なサイクルとするというものです。

PDCAは段階を踏んで回すものです。繰り返し計画をたて実行して振り返り改善します。それも高速で回すことが求められています。速度が重要です。高速PDCAが理想とされます。計画を達成することが目標です。

一方のOODAは回すものではありません。下記のようなOODAループをイメージしているようでしたら、大きな誤りです。

そのような誤解がされていると、OODAを回転させることにとらわれ、時間を浪費します。時間を浪費するとともに脳が疲労していきます。

この時間の浪費そして脳の疲労をもたらすのが、環境にかかわらないOODAのステップのサイクル回転です。

PDCAが回らないという問題と同じ事態になってしまう危険性があります。


誤解 4:情勢判断、方向づけ

一般の議論をみますと、OODAの二番目のO:Orientの意味や解釈について誤解があります。

O:Orientとは、「情勢を判断」「状況を判断」するだけではありません。「方向づけ」だけでもありません。「適応」でもありません。必ずしも適応せず環境に対して詭道の策を取ることもあるからです。これらは、便宜的な表現と理解しておく必要があります。

ジョンボイドは、世界観を持つことは「メンタルモデルの世界を、変化し発展する観察された現実の世界に一致させる、自然を本質的に理解する弁証法 dialectic の活動」と述べています[1]。これが 「Orient わかる」と解釈できます。

これは、世界を認知していく弁証法です。変化する世界との対話や推論を通して認識していきます。世界観 world view を組み立てていく基盤になります。抽象的な原理を認識する形而上学 metaphysics の対立概念です。

OODAのOrientとは、脳により現実の世界を認知する世界観をもつことです。認識する、そして理解し、見当づけし、納得して行動に移すまでのプロセスです。日本語の わかる ことです。

ジョンボイド が最初にメンタルモデルを提言しました。その後、認知科学 Cognitive Science の分野で、研究が進んでいます。

わかる Orient を起点に、みる Observe 、きめる Decide 、うごく Act ことで、早期に気づき適時で効果的で俊敏で高速の行動ができます。

[1]Boyd, John, (1976) Destruction and Creation

誤解 5:形式主義の固定観念

固定観念の破壊と創造が必要です。短文の記事の説明では限界があります。

状況の中に入り込んで現場で体験したように説明することにより疑似体験しないと納得は難しいかもしれません。

ネガティブリスト方式

これしかダメと規制されると行動しやすいと考える日本人が多くいます。できることに縛られる日本人の固定観念「ポジティブリスト方式」です。

これが形骸化する形式主義を生んでいます。

このような固定観念が、計画があったらそれに従って行動するというPDCA信仰を巻き起こしてきました。

この観念に引きずられると、OODAを採用しても、PDCAのP:計画に代わるものをどうしても欲しいという思いになります。P:プランの代わりにD:デザインをしてからOODAを回すという意見はその一例です。

ネガティブリスト方式での思考を理解することがOODAを理解することにつながります。


誤解 6:経営から現場への丸投げ

OODAを経営に適用すると以下のような懸念が出てきます:

  • 計画がなくなって現場は何をしたらいいか分からず混乱する
  • 現場に権限を移譲して現場の臨機応変な判断に依存して大丈夫か
  • 経営側が責任を丸投げできるか

OODAは経営と現場が同じ認識、価値観を持つことを求めます。

認識は、OODAの二番目のO:Orientation わかるで行われます。ここで共通価値観を持つように、見て、学び、身につけていきます。

この頭の中でもつ認識を、世界観:VSAといいます。


誤解 7:デザインから入る「D-OODA」

D-OODAというOODAの前にオペレーショナルデザインのDを置くという主張があります。

これは、ジョンボイドのビジョン、メンタルモデルの議論とは齟齬を来しています。デザインは感性に基づいた問題解決に有効です。しかしそれに加えて感性に基づいた問題設定が必要です。

くわえて、デザインを作成するために十二分に情報を収集して根回しをし組織間調整をすることになりかねません。デザイン過程に時間がかかってしまいます。

少なくとも、アメリカやヨーロッパではD-OODAのような方法は使われていません。

私たちのビジネス実務でのOODAループ適用の経験からは、夢・ビジョンが重要な位置付けになることが明らかになっています。夢・ビジョンをわかる Orient 過程で明らかにして、戦略を縦横無尽に取捨選択していくことが肝要なのです。


誤解が、時間の浪費、脳の疲労をもたらす


時間の浪費

誤ったOODAを実行すると、時間の浪費そして脳の疲労をもたらします。

まっさらで みる Observe ことから始めていたのでは、わかる Orient まで無制限に時間を浪費してしまい、きめる Decide ことができず、結局うごく Act ことができません。

次のステップに移らなくてはならないという固定観念が、環境から乖離したサイクル回転を強要します。

すると図に示した、見てからの情報伝達の時間、分かってからの判断の時間、決めた後の行動開始までの時間、そして結果が生起するまでの時間が浪費されることになります。

軍事の実戦であっても、ビジネスの実践であっても、勝ち残ることができません。


脳の疲労

普通、人間は判断を避けます。脳を使いたくないのです。

今日のVUCAの世界ではますます脳に対する負担が増しています。脳は酷使されています。全ての疲労は脳が原因といわれています。

脳は日常生活をしているだけでも大量のエネルギーを必要としています。脳の主なエネルギー源はブドウ糖です。人間の脳における酸素消費量とブドウ糖消費量は全摂取量の約25%を占めているといわれています。

まっさらで みる Observe ことから始め、わかる Orient まで時間を浪費し、きめる Decide ことがなかなかできず、結局、うごく Act ことが遅れる誤ったOODAでは、脳が疲労します。

人間は無意識に脳の疲労を避けます。本能的に人間は脳に負担のある誤ったOODAに基づいた判断を避けようとします。これはPDCAにおいても同様です。脳の疲労をもたらし負荷がかかっています。

これでは、OODAの理屈はわかっても実際に使うことはできません。OODAを回しても疲れるだけです。

効率的に脳を使う必要があります。詳細を下記の書籍で紹介しています。


以上に挙げた論点をはじめ、OODAループのビジネスへの適用法をわかりやすく解説したのが「「すぐ決まる組織」のつくり方:OODAマネジメント」です。世界初のOODA導入の入門書です。OODAループを現場へ導入するための方法を、長年の実績にもとづいて書かれた入門書になります。

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「すぐ決まる組織」のつくり方
OODAマネジメント
[紹介]

著者:アイ&カンパニー 入江仁之
出典:本論文は2005年以来のOODA実装結果に拠る提言です。参考にした文献はこちらです。
脚注:本論文はPDCAの品質統制への適用について議論するものではございません。
脚注:本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
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