効果起点の原則 EBO


OODAには、「効果起点の原則」Effects-Based Operations, EBOあるいはEffects-Based Approachがあります。

効果を起点に行動を考え遂行する考え方です。

効果を考えて戦闘行動を考えます。EBOは、第二次世界大戦初期のナチス ドイツの電撃戦を研究され構築されました。1991年の湾岸戦争Desert Storm air campaignで実践適用され、デイヴィッド デプチュラDave Deptulaアメリカ空軍中将が攻撃計画を策定しました。攻撃目標と期待する効果の視点から時間と空間を使い効果重視の作戦行動が計画されました。

目標はそれまでの戦いが対象にしていた敵国の物理的戦闘能力の破砕ではありません。目標は敵国の交戦意思である精神的戦闘能力を破壊することです。精神的戦闘能力が破壊されれば戦争に勝つことができるのです。

以下に、効果重視の行動について、 第二次世界大戦初期のナチス ドイツの電撃戦、そして従来と湾岸戦争でのアメリカ軍の戦略を紹介することをとおして説明します。


第二次世界大戦初期のナチス ドイツの電撃戦:前線ではなく陣地内指揮官攻撃に集中

ドイツ軍は兵力でも兵器でもフランスやヨーロッパ諸国に対してその優位性はありませんでした。しかし、ドイツ軍はフランス軍の正面突破を限定された狭い地域にしかけました。突破口を作るために爆撃機と戦車と歩兵部隊を一体的に統合運用し小さな穴を開けました。

ドイツ軍はここで効果重視の考え方を取っています。敵国の交戦意思を無くすという目標に集中しています。その目標に関係しないフランス軍の前線の戦闘能力に打撃を与えて突破口を広げる行動はとりませんでした。爆撃機、戦車、歩兵部隊が連携して狭い突破口から一気にフランス軍の司令部めがけて突進します。フランス軍陣地の奥にいる指揮機能を麻痺させるため敵陣内の奥深くに入り込みます。陣地内から前線までフランス軍がパニック状態に陥りました。フランス軍[1]の指揮官の精神状態を混乱させ交戦意思を壊滅させ、ナチス ドイツに勝利をもたらしました。

[1]第一次世界大戦の際にイギリス軍との連絡将校を務めたフランスの評論家アンドレ モーロワAndr´e Mauroisが、ドイツの電撃戦が成功した理由についてフランス側からの視点で議論しています。アンドレ モーロワ著、高野彌一郎訳 (2005)「フランス敗れたり」ウェッジ

第二次世界大戦などでのアメリカ軍の戦略

従来のアメリカ軍の戦闘は、敵軍の破壊、全滅、消滅をもたらす行動に焦点を当てていました。攻撃目標が敵軍を打撃することに置かれていました。陸上での戦闘で敵陣を破滅させることを攻撃目標に、陸軍が中心となり海軍、空軍が支援して敵の軍隊を打撃することを考えていたのです。 アメリカ軍のそれまでの攻撃は、圧倒的な砲弾で敵の物理的な交戦能力である戦闘能力を破壊することを目標としていました。 将兵、軍事装備、軍事施設などの戦闘能力を破壊することに集中していたのです。

たとえば、第二次世界大戦では、作戦開始前に決めた作戦計画に定めた敵国戦闘能力の壊滅という目的達成まで、作戦の効果に関係なく当初決めた計画にしたがい実行しました。いわゆる「消耗戦」Attrition Warfareです。爆撃の有効性で比較すると、たとえば第二次世界大戦では一つの標的に対してアメリカ軍の爆撃機B-17の出撃は1000回で250ポンドの爆弾を9000個投下する必要がありました。投下した爆弾のうち20%しか目標投下地点に落ちていなかったとのことです。このため膨大な爆撃機の出撃が必要でした。


第二次世界大戦での日本海軍の失敗

日本海軍は、ドイツ プロイセンの戦略理論である殲滅戦理論をとりました。引き分けに持ち込ませずに敵を殲滅する戦いです。艦隊決戦を仕掛けました。常に敵の艦隊に巨艦を向かわせました。これで大敗を喫しました。


ベトナム戦争でのアメリカ軍の失敗

アメリカ軍はベトナム軍の物理的破壊、全滅、消滅の対象がほとんどない戦いにおいて失敗しました。

この失敗により機動戦の重要性が認識され始めました。ここで機動戦の研究を進めたのがボイドでした。


湾岸戦争でのアメリカ軍の戦略

これに対して、ジョンボイドが戦略構築に関わった1991年の湾岸戦争で最初に本格的に適用されはじめたのが「効果起点の原則」の考え方です。湾岸戦争で採用されたのが「消耗戦」に対して「機動戦」Maneuver Warfareといわれています。効果から有効な打撃を選択していき実行します。この結果、湾岸戦争では二つの標的をステルス攻撃機F-117ナイトホークの1回の出撃で2000ポンドの爆弾2個投下で攻撃できました[1]

アメリカ軍は湾岸戦争以降、それまでの消耗戦から「効果起点の原則」の考え方に転換しました。 最初に目標とする最終結果の情態に焦点を当てどのような情況にするか考えます。その目標達成のためには必要最少の手段と能力で目標達成を考えます。手段には、たとえば政治的、経済的、社会的、心理的攻勢をかけること、圧倒的な軍事力を示して威嚇し戦争を抑止すること、ネット上でサイバー攻撃を行い敵国の政治経済に打撃を与えることなどあらゆるものが含まれます。それらから目標達成に有効な手段を洗い出し実行していきます。

[1]Air University (1945, reprinted 1987) The United States Strategic Bombing Survey Report (European War)(Pacific War)Air University Press, p. 13. (PDF)
Deptula, Brigadier General David A. (2001) Effects-Based Operations- Change in the Nature of Warfare, Aerospace Education Foundation (PDF)

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