自律分散組織

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自律分散組織(Autonomous Decentralised Organization)は、現地現物を重視した一部の日本企業で採用され成功してきた組織モデルです。自律的に活動するチームのメンバーが関係組織と協調コラボレーションする自律分散経営を行う組織です。なお、米国で議論されているDistributed Autonomous Organisation (DAO)とは異なります。

自律分散組織は、最近、欧米企業そして日本企業においても注目されてきています。

全員経営、全員参加経営:
自律分散組織は、従業員全員が経営について関心を持ち、ひいては積極的に経営に関与します。この観点で、全員参加経営ともいえます。

柳井ユニクロ社長は、全員経営について次のように指摘します。「全員が知識労働者で、チームの一員であると同時にチームのリーダーだということ。自分の仕事に対して、自分でリーダーシップを持ってもらいたいと、そういうこと」「僕いつも言っているんですけどね、社長の言っているとおり会社を経営すると大失敗しますよって。それぞれの人が全社的に自立して考えて仕事をする組織にしないといけない。社長が、これは違う、あれをこういう風にしてくれって言ってたら、その会社はやっぱりうまくいかないと思います」

管理のない経営:
自律分散組織の基本は管理をせずに、当事者意識を持って自律的に運営することです。それを発展させて上司がいない経営まで進めているケースもあります。これを「上司不在による経営」(Management By Absence, MBA)ともいわれます。

サーバントリーダーシップ (Servant Leadership):
リーダーが統率して組織を率いるのが旧来の支配的リーダーシップです。一方、その反対に、リーダーが組織に奉仕して支援するのがサーバントリーダーシップです。自律的に組織を運営するためのリーダーの形態です。

ネットワーク型組織、アメーバ型組織:
組織構造としてはネットワーク型組織の形態を採ることもあります。しかし、ハイアラーキー(ヒエラルキー)型組織でも、自律分散組織は実現されます。稲盛和夫氏の実践してきたアメーバ経営も、その一つの形態です。

中央集権、官僚的組織、ピラミッド型組織、ハイアラーキー(ヒエラルキー)型組織:
自律分散は、従来の大半の企業が採用している中央集権や官僚的組織、ピラミッド型組織、ハイアラーキー(ヒエラルキー)型組織など階層型組織の対極にある組織モデルです。


事業創成、事業転換に適した組織:自律分散組織
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新たな事業を創成して、事業転換をしていくためには、旧来の事業組織の配下で事業創成チームを編成しても実現するのは困難です。旧来の事業組織はオペレーションに重点があり、保守的に過ちを少なく高効率な運営をすることが重要でかつ要求されるためです。

新たな取り組みをするためには、自律分散組織が有効です。事業創成のミッションを与えられたチームを縦横無尽に発足させてイノベーションを起こさせることが重要です。


自律分散経営の導入方法論

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私どもがこれまで自律分散経営そしてワクワクする組織の導入をしてきた経験に基づき構築し有効性が証明された導入方法論を紹介します。この方法論は包括的なもので、一部を適用しても成功するものではありませんが、参考にその一部を紹介します。

自律分散経営を導入する際に参考となる設計運用原則があります。米軍のOODAループです。以下に紹介します。


米軍OODAループ

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組織運営方法:OODAループ
米軍のオペレーションはOODAループに基づいています。OODAループは、ビジョンを明確にした上で、権限を現場のチームに与え、現地現物で俊敏な運営をする組織運営の方法です。

組織モデル:SWATチーム
OODAループにより運営される組織が、自律分散型組織の一種になります。少数精鋭チームがテロ組織に対峙して初期ミッションを完遂させます。

装備品:第5世代OODAループ
戦闘機もOODAループに基づいて開発されています。最新の戦闘機は第5世代OODAループに基づいて開発されています。

戦闘モデル:NCW
OODAループに基づいた戦闘が「ネットワーク中心戦、NCW(Network Ccentric Warfare)」といわれます。情報通信技術ICTを駆使した戦闘モデルです。現場に権限が与えられていると同時に、専門家がサポートして初期ミッションを達成させます。

権限:パワートゥザエッジP2E
OODAループに基づく組織運営では、権限が現場に移譲されます。これがパワートゥザエッジP2E (power to the edge)と呼ばれています。


自律分散組織の実例

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部分的に自律分散組織を導入している事例は多岐に渡ります。

メンバーの動機付けを重視して現状打破を図りイノベーションを起こしていく組織に、「ワクワクする組織」があります。

「ワクワクする組織」以外に、旧来の組織の中で自律分散組織を構築している実例として以下にいくつか紹介します。


プロジェクト組織

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プロジェクト組織も、期間限定の自律分散組織の一形態になります。個々のプロジェクト専任チームを作り、 プロジェクトを遂行します。

欧米先進企業では、組織の垣根を越えて新たな取り組みをするコラボレーションというキーワードでも議論されている組織の取り組みです。


GE ワークアウト™

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官僚的組織の悪弊を打破するためにジャックウェルチにより採用されたのがワークアウトです。ワークアウトはGEの登録商標です。組織の壁、境界がない組織を実現するために作り上げた組織風土改革の方法論です。タウン・ミーティングと共に、組織横断で官僚的な弊害の手続き、過剰な報告書や承認を無くしていきます。

組織横断の問題を解決するために様々な組織部門からメンバーを出して解決策を俊敏に決定実行していきます。


リーンスタートアップ

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シリアルアントレプレナー、エリック リース(Eric Ries)により提唱されているリーンスタートアップも、自律分散組織の一例になります。素早くアジャイルでリーンに事業を立ち上げるために、「勝ち残る力:OODA」と同様ベースになっているのは、トヨタ製品開発方式TDSです。計画を立てることに注力するのではなく、お客様の視点を重視して事業を作り上げていきます。
GEもリーンスタートアップに従った自律分散組織への転換をしています。


トヨタ BR組織

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自律分散組織の代表例がトヨタの「BR(ビジネス・リフォーム、Business Reform)組織」です。喫緊のテーマに対して、関係部門からメンバーを集めた全社組織横断の統括部門です。一種のタスクフォース型のプロジェクトチームです。

トヨタで設けられているBR組織は、電気自動車の開発、コネクティッド戦略、コミュニケーション改善、現地生産・現地調達推進など、事務領域から、技術領域まで様々です。


日産 CFT組織

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自律分散組織のもう一つの例が日産の「CFT(Cross Functional Team)組織」です。特定のテーマについて期限を設けて活動をする、関係部門から将来有望のメンバーを集めた全社組織横断のチームです。

日産のCFTには、#1 事業の発展、#2 購買、#3 製造・物流、#4 研究開発、#5 マーケティング・販売、#6 一般管理費、#7 財務コスト、#8 車種削減、#9 組織と意思決定プロセス、#10 設備投資コスト、#11 ダイバーシティ、#12 時間短縮があります。


コミュニティ オブ プラクティス COP

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コミュニティ・オブ・プラクティス(Community of Practice、実践コミュニティ)とは、 あるテーマに関して実務を遂行するにあたり、その分野の知識や技能の相互交流を通していく人々の自律分散組織集団です。


コミュニティ オブ インタレスト COI

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コミュニティ オブ インタレスト(Community of Interest、関係者コミュニティ)とは、 あるテーマに関して関心を持った人々が、その分野の知識や技能の相互交流を通じて深めていく自律分散組織集団です。


自律分散組織の成功要因
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自律分散組織の導入は一朝一夕には行きません。トップダウンで移行して成功するものではありません。組織の文化を変えていく必要があるためです。顧客中心の文化が徹底された企業で、長期的にボトムアップで取り込み採用することにより成功しています。

導入を成功させるためには、以下を注意する必要があります:

  1. 各チームに権限委譲されている環境を作ります。
  2. 各チームが数年後に達成する姿、ビジョンを決めます。
  3. ビジョン実現のために実行すべき方策である戦略、そして直近の一、二年の活動方針を定めます。これらをビジョン、戦略そして方針:VSAといいます。
  4. VSAのビジネスケースを決め、必要に応じて、トップマネジメントとの間でVSAおよびビジネスケースについての合意を得ます。
  5. チームに能力的に最適任と思われる人を様々な組織から集めます。特にリーダーにはHIPO(潜在能力が高い人)を抜擢します。一般的に、メンバーは専任と兼任の混成になります。リーダーは専任になることが望ましいです。

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