数値目標管理(KPIやBSC)の限界

以下のようなことが起きていないでしょうか。

数値目標管理では生き残れない典型的な情況

  • パフォーマンス/業績評価の時に目標設定とは全く関係なく評価される
  • 数値目標が低く設定されれば目標に対する業績が高く達成でき、低めの目標設定に集中する
  • 数値だけで評価され業績給が出るので、どんなことをしても数値だけ上げることに集中する
  • 評価が公平に行われていないと受け止められている
  • 専門的な勉強、能力開発に高いニーズがあるが、目標設定の際にも上司に触れてもらえない
  • これからのキャリアパス昇進の道について、上司から何も教えてもらえない
  • 昇進が不公平な個人的な好みで行なわれていると受け止められている
  • 褒賞が目標に対する達成度とは関係なく決められていると思われる
  • 表彰されるのが、いきなりで、予測もつかず、好みで決められているように思われる

このような情況を放置しておくと組織の一人一人の心が離れてしまいます。少なくとも、企業が向かうべきビジョンそしてその方向(ベクトル)と、個々人が企業で働くにあたって期待している方向(ベクトル)とが合っている必要があります。


数値目標管理:KPIやバランストスコアカード(BSC)

これまでロバートS キャプラン Robert S. Kaplan とデビッドP ノートン David P. Norton が提言したバランススコアカード(BSC)[i]が、業績評価制度のツールとして主流でした。

数値管理偏重

旧来の、財務報告に偏った目標予算管理評価制度や、バランスを重視するあまりに複雑になりすぎた数値管理を中心とするバランストスコアカード(BSC)は、数値管理に注目がいってしまい、本来の方針の実現に関心が及ばないという限界がありました。企業によっては、数値目標を低く設定することに知恵を出したり、数値さえ達成すれば他のことはおざなりになってもいいと重要なことがおろそかになったりしています。これらの企業は、数値目標管理を廃止しています。

煩雑な更新作業

また、バランストスコアカード(BSC)では、効果が期待できない数値管理業務に多大な時間がかかることも災いし、数値指標の更新を放棄している会社が増えている理由になっています。

KPIの本来の目的

重要業績評価指標KPI(Key Performance Indicator)は、重要な成功要因CSF(Critical Success Factor)の情況を評価するために設けられるものです。人事評価に適用するものではありません。

人事評価制度の問題点

人事評価にKPIによる数値目標管理を適用することによる弊害が出ています。

マーク  ホダック Marc Hodak [ii]の調査によると、バランススコアカード(BSC)による数値目標実績管理に基づき業績給を支給している企業はS&P 500の15 %を占めましたが、その他の企業より平均3.5 %業績が低かったことが明らかになっています。

数値だけでの評価では、行動の内容に関わらず数値目標さえ達成しさえすればボーナスがもらえるので、どんなことをしてまでもその数値の目標の達成に邁進して本来するべき方針がないがしろになってしまう弊害があります。必達目標管理が行き過ぎて現場が疲弊し品質問題をも起こした自動車メーカーがあります。目標数値を自分の能力よりも低く設定するようにして業績評価を高くしてもらうようになり、高い目標に向かってチャレンジする雰囲気が無くなってしまった大手電機メーカーもありました。

数値目標を主として業績給に反映させるのではなく、ビジョンと戦略、それを実現する行動方針に焦点を当てることが重要です。もし有効で必要であれば、方針管理を補足する位置付けで定量的な評価をするための指標を、方針の達成状況を評価する補足ツールという位置付けで使うことが重要です。

これらの数値目標管理の問題を解決するために「目標・評価・育成・褒賞制度」を見直します。

[i].  「The Balanced Scorecard: Translating Strategy into Action」Robert S. Kaplan、David P. Norton著、Harvard Business School Press、1996年。「キャプランとノートンの戦略バランストスコアカード」ロバートS キャプラン, デビッドP ノートン著, 櫻井通晴訳東洋経済新報社2001年
[ii]. Hodak, Marc,  (2005) Pay For Performance: Beating Best Practices, The Journal of Applied Corporate Finance (PDF)

従来の方針管理の限界

ビジョン設定

多くの日本企業は、ビジョンとしてこれまでそしてこれからも行っていく活動を表現していることが多いです。数年後に何を実現するといったビジョンを示している企業は少数です。iPS細胞でノーベル賞を受賞された山中教授は、皮膚細胞から万能細胞を作るというビジョンを掲げて、そのビジョン実現に励んだことでノーベル賞受賞までできたとおっしゃっておりました。方針管理ではビジョンの定義を行うことが示されていません。

ビジョンは達成することを社会が望む、顧客価値提案である必要があります。ビジョンから逆算して、何をすべきかを決めていきます。


営業数値の達成

いわゆる方針管理は生産技術が主になっています。次の工程をお客としてきた生産技術では本当のお客を扱う営業の視点が軽視されています。方針を定量的に表現する指標を設ける機能領域があります。


外部を意識した活動

いわゆる方針管理で運用している一部の組織では物事の決定に大勢の人が関わらなくてはならないといった現象も出ています。内部調整に振り回され外部環境を注視したビジョンや戦略がおざなりになっています。外部環境を取り組むビジョンと戦略の思考(OODAのOO)が重要になり、明示的にビジョン・戦略を定めることが重要です。


長期計画での目標値

いわゆる方針管理では長期・中期・短期においての計画を前提としていますが、環境が変わる中、計画や到達目標値ではなく、何を実現するかのビジョンが必要です。


統合VSMA管理(ビジョン・戦略・方針管理)の強み

VSAは以下の効果があり、グローバル企業で導入され多大な効果を上げています。
・ビジョン設定による中長期成長の視点

・評価時点での人事評価制度
・評価結果の反映と褒賞・業績給制度

統合VSA管理の詳細については、「統合VSA管理」を参照ください。


著者:アイ&カンパニー
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