OODAループ:よくある誤解


OODAループがやっと日本でも話題になるようになってきました。私たちの調査ではビジネスパーソンの1割以上が言葉だけは知っているようです。

しかし、OODAループについて多くの誤解がみられます。昔の軍隊のOODAの理解のままの人もいます。

私たちが2005年以来の長い年月をかけ現場で研究と実証をしてきた実績に基づいて独自に体系づけたOODAループ戦略一般理論に基づいて、ここにOODAループの10の誤解を紹介していきます。


誤解 1:OODAループは意思決定法

OODAループは、意思決定法だと説明されていることがまだ多々あります。中には、朝鮮戦争の際に開発された空軍の意思決定法だと説明されていることがまだあります。

OODAループは、単なる意思決定法ではありません。

  1. 論理的思考による意思決定法だけでなく、直観も重視します。
  2. 現場主義の、問題の発見、知覚気づきももたらします。
  3. 人間の要素を重視した認知科学の理論でもあります。
  4. 実世界の認知バイアスや思い込みをみなおすクリティカル思考であります。
  5. 目指す夢・ビジョンの世界と手段・戦略を結びつけ行動し成果を出します。
  6. 手続きプロセスへの準拠ではなく、主体的に自ら考え決め行動できます
  7. 自己決定理論による内発的な動機付けが重視されます。
  8. 行動のための意味づけがなされます。
  9. 新たな統合、組み合わせの発想ももたらしイノベーションを実現させます。
  10. 新たなことを身につける学習の理論でもあります。
  11. 仮説設定と検証を行う経験主義の科学的方法でもあります。
  12. 自律分散を実現するリーダーシップの理論でもあります。

このようにあらゆるところで適用できる戦略の一般理論なのです。目的を設定してその目的実現の戦略をたて行動し結果を出す思考法です。

OODAループは朝鮮戦争で開発されたものではありません。朝鮮戦争に参戦した元空軍大佐の戦略家ジョンボイドが朝鮮戦争での戦果の原因を発想の原点として開発したといわれているものです。

OODAループは、軍隊に限った理論ではありません。ビジネス、私生活、教育・学習などあらゆる分野で使われている一般理理論、日常の思考法です。

具体的な内容を、「OODAループ思考[入門]」で紹介していますので、参照ください。

誤解 2:OODAループは手順やプロセス

OODAループは、よくPDCAと比べられて紹介されています。PDCAは継続的な改善法であり、作業手順を示したプロセスです。

OODAループは単なる手順や作業プロセスではありません。包括的な思考法であり、プロセスとは異なります。OODAループは、状況によっては知覚と同時に行動をします。状況によっては新しい発想、イノベーションをもたらすこともできます。

具体的な内容を、「OODAループ思考[入門]」で紹介していますので、参照ください。

誤解 3:OODAループは四つのプロセス

OODAループは、OODAの四つのプロセスに加えて五つ目のループの五つから構成されています。これは、ジョンボイドが尊敬していた宮本武蔵の五輪書に因んでいるともいわれています。

ループにはみこす(フィードフォワード・ループ)とみなおす(フィードバック・ループ)などがあります。

みなおす(フィードバック・ループ)が継続的改善手法であるPDCAのチェック・アクションに該当します。


誤解 4:PDCAとOODAループを併用する

私たちは、PDCAが場面を限れば有効であることを訴えてきました。PDCAを全面的に否定することはしてきませんでした。PDCAが有効である局面があるのであれば、その局面ではPDCAの活用をそのままにして、PDCAが限界になっている領域にOODAループを使って補完することを提言してきました。

このことから、OODAループを導入してもPDCAは残す必要があるという誤解をよんでしまいました。

OODAループを採用すれば、PDCAを回す必要はなくなります。私たちが支援してOODAループを採用している組織は、PDCAの適用を辞めています。

これは、誤解3で説明したように、OODAループのみなおす(フィードバック・ループ)が継続的改善手法であるPDCAのチェック・アクションに該当するからです。PDCAの有効な側面を包含するのがOODAループです。

具体的な内容を、「すぐ決まる組織 – OODAマネジメント」で紹介していますので、参照ください。

誤解 5:PDCAは古い、OODAループは新しい

PDCAは古い?

PDCAの歴史(詳細はこちらを参照ください)は、戦後1947年のPDSサークルと1950年のデミングサークルに基づいて1951年に日本科学技術連盟が提言した統計的品質統制管理SQCのPDCAサイクルから始まりました。

経営全般に使うようにと言われ始めたのは2000年以降です。

OODAループは新しい?

OODAループは、紀元前1600年に起きた「夏」を「殷」が倒した戦い以降の戦史を研究したものです。紀元前500年ごろ書かれた孫子の兵法、1645年ごろ書かれた宮本武蔵の五輪書などに基づいています(詳細はこちらを参照ください)。そして1996年にジョンボイド によってOODAループが発表されました。

つまり、PDCAは戦後の理論であるのに対して、OODAループは有史以来の兵法の集大成です。OODAループはすでにアメリカを中心にビジネスそして私生活で適用されてきています。


誤解 6:OODAループを高速で回せ

誤解の一つが、PDCAと同様に単純なサイクルとするというものです。

PDCAは段階を踏んで回すものです。繰り返し計画をたて実行して振り返り改善します。それも高速で回すことが求められています。速度が重要です。高速PDCAが理想とされます。計画を達成することが目標です。

PDCAはサイクルを回すことになります。

一方のOODAループは回すものではありません。下記のようなOODAループをイメージしているようでしたら、大きな誤りです。

OODAループを回すというとOODAループを誤解していることになります。ジョンボイドが最終的に提言したOODAループは、日本の兵法、武士道、禅の思想に影響を受けて改良され完成されたものです。知覚、認知、世界の見方である世界観に基づいた思考法になっています。

OODAループは回すものと誤解されていると、OODAループを回転させることにとらわれ、時間を浪費します。時間を浪費するとともに脳が疲労していきます。

この時間の浪費そして脳の疲労をもたらすのが、環境にかかわらないOODAループのステップのサイクル回転です。PDCAが回らないという問題と同じ事態になってしまう危険性があります。

具体的な内容を、「OODAループ思考[入門]」で紹介していますので、参照ください。


誤解 7:オリエンテーションとは情勢判断

一般の議論をみますと、OODAループの二番目のO:Orient(オリエンテーション)の意味や解釈について誤解があります。ジョンボイドの著述を踏まえていない議論を多く見受けます。

O:Orientとは、「情勢判断」や「状況を判断」するだけではありません。判断を必ずもしません。「方向づけ」だけでもありません。また「適応」でもありません。必ずしも適応せず環境に対して詭道の策を取ることもあるからです。これらは、便宜的な表現と理解しておく必要があります。

ジョンボイドは、「メンタルモデルの世界を、変化し発展する観察された現実の世界に一致させる、自然を本質的に理解する弁証法 dialectic の活動」と述べています[1]。これが 「Orient わかる」です。これは、世界を認知していく弁証法です。

変化する世界との対話や推論を通して認識していきます。「世界観」”view of the world” を組み立てていく基盤になります。抽象的な原理を認識する「形而上学」 “metaphysics” の対立概念です。世界観を持ち、常にみなおして更新していきます。

OODAループのOrientとは、脳により現実の世界を認知する世界観をもつことです。認識する、そして理解し、見当づけし、納得して行動に移すまでのプロセスです。日本語の わかる ことです。

ジョンボイド が、世界で最初にメンタルモデルの概念を提言しました。その後、認知科学 Cognitive Science の分野で、研究が進んでいます。

わかる Orient を起点に、みる Observe 、きめる Decide 、うごく Act ことで、早期に気づき適時で効果的で俊敏で高速の行動ができます。

具体的な内容を、「OODAループ思考[入門]」第3章で紹介していますので、参照ください。

[1]Boyd, John, (1976) Destruction and Creation


誤解 8:形式主義の固定観念

固定観念の破壊と創造が必要です。短文の記事の説明では限界があります。

状況の中に入り込んで現場で体験したように説明することにより疑似体験しないと納得は難しいかもしれません。

コモンロー、ネガティブリスト方式

これしかダメと規制されると行動しやすいと考える日本人が多くいます。できることに縛られる日本人の固定観念「ポジティブリスト方式」です。成文法の体系を中心におくシビルロー(大陸法)の考え方に影響を受けています。全て法律で規定し、規定に従うことを迫ります。

これが形骸化する形式主義を生んでいます。

このような固定観念が、計画があったらそれに従って行動するというPDCA信仰を巻き起こしてきました。

この観念に引きずられると、OODAループを採用しても、PDCAのP:計画に代わるものをどうしても欲しいという思いになります。P:プランの代わりにD:デザインをしてからOODAループを回すという意見はその一例です。

ネガティブリスト方式での思考を理解することがOODAループを理解することにつながります。ダメなことだけ定め、それ以外は自由な発想で考えることです。これは、判例法を法体系の中心におくコモンロー(英米法)の考え方が背景にあります。


誤解 9:経営から現場への丸投げ

OODAループを経営に適用すると以下のような懸念が出てきます:

  • 計画がなくなって現場は何をしたらいいか分からず混乱する
  • 現場に権限を移譲して現場の臨機応変な判断に依存して大丈夫か
  • 経営側が責任を丸投げできるか

OODAループは経営と現場が同じ認識、価値観を持つことを求めます。

認識は、OODAループの二番目のO:Orientation わかるで行われます。ここで共通価値観を持つように、見て、学び、身につけていきます。

この頭の中でもつ認識を、世界観:VSAといいます。

具体的な内容を、「すぐ決まる組織 – OODAマネジメント」で紹介していますので、参照ください。

誤解 10:デザインから入る「D-OODA」

D-OODAというOODAの前にオペレーショナルデザインのDを置くという主張があります。

これは、ジョンボイドの「世界観」「ビジョン」「メンタルモデル」の議論とは齟齬を来しています。デザインは感性に基づいた問題解決に有効です。しかしそれに加えて感性に基づいた問題設定が必要です。

くわえて、デザインを作成するために十二分に情報を収集して根回しをし組織間調整をすることになりかねません。デザイン過程に時間がかかってしまいます。

アメリカやヨーロッパではD-OODAは使われていません。

私たちのビジネス実務でのOODAループ適用の経験からは、夢・ビジョンが重要な位置付けになることが明らかになっています。夢・ビジョンをわかる Orient (オリエンテーション)過程で明らかにして、戦略を縦横無尽に取捨選択していくことが肝要なのです。

具体的な内容を、「すぐ決まる組織 – OODAマネジメント」で紹介していますので、参照ください。

誤解が生まれる原因

これらの誤解は、ジョンボイドの著作の視点を避けていたりジョンボイド 理論と齟齬を来していたりしています。アメリカ先進企業のOODAループ適用の現場や最新の米軍の議論とも齟齬をきたしています。

このように多くの誤解をもたらしている原因は、誤解している論調をみると明らかです。多くの誤解は、日本語のブログなどの情報や、良くても彼の同僚が書いた日本語訳書だけでOODAループを理解しようとしているためと考えられます。


誤解が、時間の浪費、脳の疲労をもたらす


時間の浪費

誤ったOODAループを実行すると、時間の浪費そして脳の疲労をもたらします。

まっさらで みる Observe ことから始めていたのでは、わかる Orient まで無制限に時間を浪費してしまい、きめる Decide ことができず、結局うごく Act ことができません。

次のステップに移らなくてはならないという固定観念が、環境から乖離したサイクル回転を強要します。

すると図に示した、見てからの情報伝達の時間、分かってからの判断の時間、決めた後の行動開始までの時間、そして結果が生起するまでの時間が浪費されることになります。

軍事の実戦であっても、ビジネスの実践であっても、勝ち残ることができません。


脳の疲労

普通、人間は判断を避けます。脳を使いたくないのです。

今日のVUCAの世界ではますます脳に対する負担が増しています。脳は酷使されています。全ての疲労は脳が原因といわれています。

脳は日常生活をしているだけでも大量のエネルギーを必要としています。脳の主なエネルギー源はブドウ糖です。人間の脳における酸素消費量とブドウ糖消費量は全摂取量の約25%を占めているといわれています。

まっさらで みる Observe ことから始め、わかる Orient まで時間を浪費し、きめる Decide ことがなかなかできず、結局、うごく Act ことが遅れる誤ったOODAでは、脳が疲労します。

人間は無意識に脳の疲労を避けます。本能的に人間は脳に負担のある誤ったOODAループに基づいた判断を避けようとします。これはPDCAにおいても同様です。脳の疲労をもたらし負荷がかかっています。

これでは、OODAループの理屈はわかっても実際に使うことはできません。OODAループを回しても疲れるだけです。

効率的に脳を使う必要があります。詳細を下記の書籍で紹介しています。

 

 

 


ビジネスで使うためのOODAループ組織論の入門書

組織向け

これまで、海外も含めてビジネスパーソンが著したビジネスでOODAループを適用する解説書がありませんでした。実務で適用した知見に基づいた解説本が求められていました。

このようなご要望にお応えして、OODAループの組織への適用法を解説した書籍が「「すぐ決まる組織」のつくり方 – OODAマネジメント」です。世界初のOODAマネジメント入門書です。OODAループを現場へ導入するための方法を、長年の日米企業での適用実績にもとづいて書かれた世界唯一の入門書になります。
概要紹介サイト: 「すぐ決まる組織」のつくり方 – OODAマネジメント [紹介]


日常で使うためのOODAループ思考の入門書

個人向け

個人が日常でOODAループをどのように使ったらいいかを平易に述べたOODA入門書籍が求められていました。この要望にお応えして、いよいよ個人向け入門書を出版しました。「OODAループ思考 [入門]」です。
概要紹介サイト:「OODAループ思考[入門]  [紹介]

著者:アイ&カンパニー 入江仁之
出典:本論文は2005年以来のOODA実装結果に拠る提言です。参考にした文献はこちらです。
脚注:本論文はPDCAの品質統制への適用について議論するものではございません。
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