メンタルモデル

メンタルモデル Mental Modelsとは、心の中にもつイメージ、思いです。

世界の見方、心の中でどう考えているか、頭の中のイメージ、認識、仮説、深く染み付いた思い込み、頭の中にある世の中の模型、心に思い浮かべるモデル、固定概念や暗黙の了解、心の枠組み、行動を決める価値観、癖、習慣、行動パターン、ルーティン、考え、好み、想定、経験知識、マインドセット(考え方)、思考、パラダイム(規範)といったものがメンタルモデルです。メンタルモデルは、様々な定義で使われていますが一番広義のメンタルモデルが心の中にもつイメージです。

マインドセットMindsetとは、考え方。経験、知識などから形成される暗黙の思考様式、 心理状態、了解事項、価値観、信念です。

パラダイム Paradigmとは、規範。模範、当然のことと考えられていた認識や支配的思想、社会全体の価値観、思い込みです。


メンタルモデルの機能

誰でも人間は心の中に固定化した暗黙のイメージやストーリーを持っています。人間は情報をつかむと、これはこういうものだと、それまでの知識に基づいてイメージを作ります。これが心の中のイメージであるメンタルモデルです。

人間が取る行動、人間が達成しようとしていることを心の中に持ちます。実世界であるモノゴトがどのように動くかの心の中での想定です。

臨機応変に即断、即決、即応できるのはメンタルモデルがあるからです。

裏返せばどんなに時間をかけて悩んでもメンタルモデルがないと判断できません。これが頭が真っ白な状態です。何も考えていない状況です。

メンタルモデルは考えや知識経験を分類整理することで瞬時に判断に活かせます。


メンタルモデルの効果

人間はメンタルモデルを持つことによって、脳がその後の同様の情報を高速に処理することができます。

人間はメンタルモデルを形成すると、脳の負担と時間を節約するために、慎重に考慮した分析を省略して、瞬間に処理することができます。


メンタルモデルを適用する目的

ビジネスになぜメンタルモデルを使うのか、その目的は下記の三点に要約できます。

方向性の明示

企業のビジョンと行動を紐づけることができ、行動を起こす際に方向性が明確になります。

アクションを取る行動の利用者であるお客様の効果と所属する提供者である企業の利益を明示することができ、方向性が明確になります。

行動の確信

行動が正しいかどうか確信を与えてくれます。

継続性

長い期間に変わらない普遍的な継続的な方向性を示してくれます。戦略や行動方針の継続性が保たれます。


メンタルモデルの例

メンタルモデルは、人間が考え行動する場面では必ず機能しています。その例を紹介します。


朝鮮戦争での空中戦

空中戦で、米国空軍大佐ジョンボイドが持たせたメンタルモデルは、「敵機を瞬時に打撃する」というものでした。

このメンタルモデルにより、敵機の発見に集中して、発見すると同時に打撃することができました。メンタルモデルがないと、発見と打撃の間の判断時間が浪費されます。このため自軍機1機に対して10機を撃墜することができたといわれています。


第二次世界大戦でのドイツのフランス侵攻

第二次世界大戦初期にドイツ軍が戦闘において持たせたメンタルモデルは、「敵の司令部の精神的な混乱をもたらすことが勝利をもたらす」というものでした。

これにより、この目標の達成に何ら意味のない前線での戦闘に焦点を当てるのではなくて、敵陣奥の司令部へ一気に向かい効果的な打撃を行い、降伏させることができました。


お客様中心の現場対応

「お客様に心を揺さぶる感動を与えること」がお客様に対する価値提供です。

このメンタルモデルを持つことで、現場での瞬時の臨機応変の対応が可能となります。


ウェブのユーザ体験UX 設計

お客様のメンタルモデルを明確に把握することにより、メンタルモデルに対応したウェブのユーザ体験UX (User Experience)設計が可能となります。

メンタルモデルに基づいた設計をすることによって、目標、判断根拠、継続性を持つことができます。


音楽の演奏によるメンタルモデルの構築

音楽の演奏において、初心者は楽譜通りに演奏できればいいと考えています。しかし、達人 Expert は、聴衆のメンタルモデルを想定して演奏の仕方を変えていきます。

演奏会と幼稚園の誕生パーティとで同じ曲を達人に演奏してもらい演奏内容を比較した実験では、聴衆によって演奏が変わり、幼稚園ではメロディが浮かび上がるように強調して演奏をしていました。(メンタルモデルの生成と活用/波多野誼余夫


作業内容のチェック:PDCA

日本人は、事前に十二分に分析して、根回しをし関係者の合意を得て、再三検討してからモノゴトを進めようとします。これは過剰な品質、過剰な完成度、過剰な部門間調整を求めます。このため動きが遅くなり動きだした時にはすでに状況が変わってしまっています。欧米そして中国やインド企業から日本企業はスピードが遅いと言われています。

これは、日本人の仕事の進め方についてのメンタルモデルが、再三にわたる作業のチェック、過剰な完成度を求めるという共通認識によると考えられます。PDCAがこのメンタルモデルを助長しています。


OODAでのメンタルモデル

メンタルモデルを中心とした世界観:VSAを使うことにより、現場での瞬時の臨機応変の判断ができます。この考え方を体系化したのが、元米国空軍大佐ジョンボイドが開発したOODAループです。

ジョンボイドが歴史的に最初にメンタルモデルの概念を提言しました。ジョンボイドは、メンタルモデルあるいはmental patterns、mental concepts や mental constructs という用語を使っていました。記述とパターンの認識フレームワークです。脳のニューラルネットワークです。

軍事OODAのメンタルモデルには、軍隊のドクトリンを含んでいます。ビジョンや戦略、行動方針を左右するものです。

OODAループ」の詳細につきましては、こちらを参照ください。


世界観:VSA

世界観:VSA とは、誰もが持っている思い、思考回路 Thinking Models のことです。

人間は何かを考えるときに、夢・ビジョンや目的がありそのための実現のための策と、その行動イメージつまりメンタルモデルを持って行動に移します。この目的意識を持った思考の仕組みが世界観:VSAです。

私たちは、普段、この世界観を意識していませんが、判断して行動することを思考するときに思考を左右する影響力を持っています。メンタルモデルは、人間の世界観を構成する重要な要素です。

世界観そしてメンタルモデルは認知科学 Cognitive Science の概念です。

世界観:VSAは、以下の構造で定義できます:

  • 夢・ビジョン  Vision:
    自己実現と組織の構想を定めます。
  • 戦略 Strategy:
    ビジョン実現の方策を定めます。
  • 行動方針Activities Directions:
    戦略から決められた行動の方針です。
  • メンタルモデル・感情 Mental Models and Feelings:
    ビジョンと戦略実現、行動方針に紐づけられる心のイメージと感情です。

この夢・ビジョン、戦略、行動方針にメンタルモデル・感情のフィルターをとおして行動が影響を与えます。 世界観:VSA」の詳細については、こちらを参照ください。


メンタルモデルなどへ影響する要素

ジョンボイドは、メンタルモデルと感情の形成、見直しに影響する要素として、文化的な伝統、遺伝的な資質、従来の経験、新しい情報、分析と統合の五つを示しています。


文化的伝統 Cultural Traditions

文化的伝統は、人種や宗教、地域などその人が属する文化圏による影響です。


遺伝的な資質 Genetic Heritage

遺伝的な資質は、その人の生まれ持った性格です。


従来の経験 Previous Experiences

過去の経験は、その人が過去にどのような体験をしどのようなことを学んだかです。


新しい情報 New Information

新しい情報は、外部から入ってくるこれまでとは異なる情報です。


分析と統合 Analysis and Synthesis

分析と統合とは、要素を細かく分解することと、その要素を包括的に捉えることでメンタルモデルを作りだします。

 

著者:アイ&カンパニー 入江仁之
脚注:本論文はフィードバックに基づき随時、更新しております。
脚注:OODAの研修・実装の詳細はこちらを参照してください。
出典:本論文は2005年以来のOODA実装結果に拠る提言です。参考文献こちらです。
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